2005 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ・ヘテロダインセンシングの開拓による銀河系星間雲の形成と進化の研究
Project/Area Number |
15071201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 智 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80182624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 朋治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10291056)
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Keywords | テラヘルツ / サブミリ波 / 星間分子雲 / 超伝導 / 電波望遠鏡 / 中性炭素原子 / 銀河系 |
Research Abstract |
本研究では、超伝導ホットエレクトロン・ボロメータ素子を用いた高感度かつ実用的なテラヘルツ帯の受信機を実現し、それを用いて星間プラズマに存在する窒素イオンのスペクトル線(1.47THz)の銀河面観測を行う。この観測を中性炭素原子、一酸化炭素分子などの分布と比較することにより、プラズマ雲が分子雲の形成、進化に与える影響を解明する。 本年度はホットエレクトロン・ボロメータ素子の作成のために、ドライエッチング装置を導入した。この装置の導入により、素子作成の自由度が大幅に広がり、素子の性能や寿命の大幅な向上が期待される。また、1.46THz帯における局部発振器を導入した。これは当該周波数で20μWもの出力が得られるもので、実験を非常に容易にした。 Nbを用いた拡散冷却型の素子については、素子インピーダンスが数100Ωと非常に高いことが問題であった。その原因について、薄膜の基本性能まで立ち戻って調べたところ、電極に用いるAuとNbの間の接触抵抗が大きく寄与していることが判明した。接触抵抗を低減する設計を行ったところ、素子インピーダンスを希望値まで下げることができた。また、800GHz帯で高周波特性のテストを行った。製作した素子を導波管マウントに装着し、冷凍機で4Kまで冷却したところ、高周波に対する応答を示し、素子がボロメータとして動作していることが確認できた。ミクサーとしての性能試験が現在進行中である。 上記と平行してNbTiNを超伝導物質として用いる格子冷却型の素子の開発を開始した。NbTiN膜の生成条件を最適化し、14K程度のTcを得た。この薄膜を用いてミクサ素子を製作する準備を進めている。 観測的研究では、富士山頂サブミリ波望遠鏡の観測データの解析を進め、中性炭素原子が分子雲形成の研究に重要な役割を果たすことを示した。一つの例はおうし座暗黒星雲群に対する成果である。中性炭素原子と一酸化炭素の比は、暗黒星雲群内のサブグループによって異なっており、星形成の履歴が少ない「若い」サブグループほど、一般に比が高いことが示された。この結果は6月にボストンで行われた国際会議、2月に日本で行われた国際会議で発表した。現在、論文のとりまとめを行っている。
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Research Products
(3 results)