2006 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ・ヘテロダインセンシングの開拓による銀河系星間雲の形成と進化の研究
Project/Area Number |
15071201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 智 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80182624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 朋治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10291056)
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Keywords | テラヘルツ / サブミリ波 / 星間分子雲 / 超伝導 / 電波望遠鏡 / 中性炭素原子 / 銀河系 / 星形成 |
Research Abstract |
本研究では、超伝導ホットエレクトロン・ボロメータ(HEB)素子を用いた高感度かつ実用的なテラヘルツ帯の受信機を実現し、それをも敷いて銀河系星間雲に存在する窒素イオンの微細構造スペクトル線(1.47THz)の観測を行う。中性炭素原子や一酸化炭素分子の観測と比較することにより、プラズマ雲が分子雲の形成、進化に果たす役割を解明する。また、様々な分子スペクトル輝線のかんそくにより、分子雲の中での星形成過程を探求する。 本年度はNbを超伝導物質に用いた拡散冷却型のHEBミクサ素子、および、NbTiNを超伝導物質に用いた格子冷却型のHEBミクサ素子の開発を進めた。ICPドライエッチング装置を新たに導入し、HEBミクサ素子の心臓部であるマイクロブリッジを高精度に製作できるようにした結果、よい直流特性をもつミクサの製作が可能になった。NbTiNを用いた素子については、NbTiN薄膜の製膜条件の最適化を行い、6nmで9.5Kの転移温度をもつ薄膜の製膜に成功した。その結果、NbTiNを用いた素子の製作を進めることができた。 作成した素子を導波管マウントに装着し、GM2段冷凍機を用いて4K以下に冷却して性能測定を行った。その結果、800GHz帯での測定において、Nbを用いた拡散冷却型HEBミクサの場合に3000Kの雑音温度を得た。この雑音温度は4K冷却型のミクサとしてはこれまでの他グループの実績と同程度である。素子設計、および測定光学系に改良の余地が残されていることを考えると、今後、より高性能のミクサの実現が可能と考えられる。一方、NbTiNを用いた格子冷却型HEBミクサの場合、1300Kの雑音温度を達成した。今後、800GHz帯での測定と素子の改良を進めながら、速やかに1.47THzにおける性能評価に移りたい。 観測的研究では富士山頂サブミリ波望遠鏡で行っていたW3領域の中性炭素原子スペクトル線観測の成果を取りまとめるともに、内外の電波望遠鏡を用いて、星形成領域における複雑な有機分子、炭素鎖分子の振る舞いを調べた。メチルフォルメートなどの有機分子は星形成の初期段階に豊富に存在することを突き止める成果を挙げた。また、炭素同位体の観測を行うことによって、星間反応追跡が可能であることを示した。
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Research Products
(3 results)