2005 Fiscal Year Annual Research Report
赤方偏移した分子・原子輝線のサブミリ波観測による銀河進化と星形成史の解明
Project/Area Number |
15071202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 孝太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80321587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半田 利弘 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (40202270)
祖父江 義明 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10022667)
長谷川 哲夫 国立天文台, 電波天文学研究系, 教授 (50134630)
関本 裕太郎 国立天文台, 電波天文学研究系, 助教授 (70262152)
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Keywords | サブミリ波 / テラヘルツ / 銀河形成 / 星間物質 / 超伝導受信機 |
Research Abstract |
本計画研究では、南米チリのアタカマ砂漠(標高4860m)に設置した、超高精度かつ大口径(10m)なサブミリ波望遠鏡(ASTE)に、サブミリ波〜準テラヘルツ帯の超低雑音受信機を開発・搭載し、これを用いて、遠方にある若い銀河からの、赤方偏移した原子・分子輝線の探査を行う。天の川銀河・近傍銀河の観測もあわせて行い、宇宙初期から現在に至る星形成史の解明を目標としている。 研究第3年度となる平成17年度は、昨年度に引き続き、ASTEを用いた本格的なサブミリ波帯分光観測を進めた。スターバースト銀河M83では、かつてない高感度かつ高品位なサブミリ波帯CO(J=3-2)輝線広域画像が完成した。ASTEおよび開発した受信機の優れた性能により、従来のサブミリ波望遠鏡では難しかった、比較的微弱な渦状腕付近における高密度ガス分布をも初めて明確に描き出すことができた。その渦状腕部のデータを詳しく解析したところ、上流側から下流側へ向かって、CO(3-2)/CO(1-0)輝線強度比が上昇していることわかった。これは、渦状腕に付随する銀河衝撃波により星の材料となる高密度分子ガスが形成される現場を、観測的に始めて捉えた可能性がある。 また、ガンマ線バースト(GRB)をプローブとした星形成史の研究を進める基盤として、GRB母銀河における星形成を理解するため、GRB980425における高感度なCO(3-2)輝線探査を行った。微弱ながら輝線の兆候を捕らえることに成功した。GRB母銀河におけるCO分子の初検出である。この結果、GRB980425母銀河には、星間物質に深く隠された星形成は存在しないことがわかった。 準テラヘルツ帯(350ミクロン帯)受信機については、光学系およびカートリッジ部が完成し、いよいよ実験室評価へ進むことができる予定である。そこに搭載する超伝導ミキサーについても、帯域を制限していた要因であるバリアの改良が進展した。すなわち、酸化アルミにかわるバリアとして、窒化アルミで良質な薄膜を製作する手法を確立することに成功した。これにより、本研究が目指す、さまざまな赤方偏移の天体を観測する上で重要な広帯域性能を実現する目処がついた。
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Research Products
(6 results)