2003 Fiscal Year Annual Research Report
特異な分子特性/集合構造の混成による新しい電子系の開拓
Project/Area Number |
15073214
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授 (10170771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 弘幸 京都大学, 化学研究所, 助手 (00283664)
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Keywords | 広域電子構造 / 大環状π電子錯体 / 電荷分離特性 / 電子系 / 光励起 / 分子場 / 両性イオン分子 / 両性極性分子 |
Research Abstract |
当初の研究計画に則り、新奇な分子場の形成が期待できる特徴的分子の探索に着手した。これまで、有機導体・半導体の研究分野では(錯体の場合は錯形成前の分子について)分子全体として無極性かそれに近い分子が主な対象であった。有機導体の場合はまだその合理性も認められるが、半導体については必ずしも十分な根拠のある問題ではない。そこで、本研究ではまず分子内で電荷が分離した、もしくは容易に分離しうる分子に着目することとした。このような性質は、静電相互作用を利用した集合構造の制御、集合体全体としての分極構造の生起、光励起下などでの協同的な電荷挙動の誘起など、分子集合体に新しい電子系を導く可能性がある。しかし、電荷分離特性だけを手掛かりに分手探索を行うことは不適切であり、その電荷分離特性についても伝統的な化学観とは実態の異なる場合も少なくない。そのため、本研究では電荷分離特性をなるべく的確に捉えつつ、分子の構造、電子の非局在性、光励起特性などを調べ、一方、合成(入手)や精製などの可能性なども検討しながら探索を進めた。その結果、これまでに大環状π電子錯体、両性極性分子、両性イオン分子などについて、それぞれいくつかの候補物質を選択した。その一部については、調製条件の制御により特徴的な分子集合構造を導きうる真空蒸着法を用いて特徴的な薄膜を作製し、その構造と直接的観測により得たエネルギーギャップ直上直下の電子構造との相関について調べた。このような広域電子構造の観測系の強化も独自に進めているが、測定に掛かる状態エネルギーの確度を本質的に高めるため、エネルギー基準としうるフェルミ準位が独立に決められるケルビンプローブを今年度導入した。現在その調整を進めており、これによって測定結果の信頼性と有用性が飛躍的に高まると期待できる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] N.Sato, H.Yoshida, K.Tsutsumi: "Unoccupied electronic states in phthalocyanine thin films studied by inverse photoemission spectroscopy"Synth.Metals. 133-134. 673-674 (2003)
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[Publications] N.Sato, H.Yoshida, K.Tsutsumi, M.Sumimoto, H.Fujimoto, S.Sakaki: "Electronic structures of unoccupied states in lithium phthalocyanine thin films of different polymorphs studied by IPES"Appl.Surf.Sci.. 212-213. 438-440 (2003)