2005 Fiscal Year Annual Research Report
特異な分子特性/集合構造の混成による新しい電子系の開拓
Project/Area Number |
15073214
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授 (10170771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 弘幸 京都大学, 化学研究所, 助手 (00283664)
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Keywords | 分子特性 / 有機薄膜 / 電子系 / フロンティア電子構造 / フタロシアニン / 電荷担体 / 格子エネルギー / 静電分極 |
Research Abstract |
特異な分子特性と集合構造の混成による新しい電子系の開拓を念頭に置き、交付予定の5年間に1)新奇な分子場が期待できる特徴的な分子の探索・調製、2)特徴的分子の集合化制御による分子場の形成・評価、3)特徴的分子の固有集合状態の光誘起等による外場効果の探査、4)新奇分子場や外場効果に基づく電子系の特性挙動の把握解明、を図ることを目指して進めている本研究の三年目は、初年度からの第一の問題を踏まえて第二年度に着手した第二の問題と、新規導入した表面・界面分光測定装置を適用して第三の問題にも踏み込んだ。実際、これまでに選んだ特徴的な分子の系について、分子の電子構造の系統的な変調が薄膜の電子物性に違いを導く実態の解明、また第四の問題とも関わる分子集合構造中の分子場の特性把握など、研究課題全体の追究に資する結果を得た。前者は、銅フタロシアニンの大環状π電子系を系統的なフッ素置換により変調し、薄膜の(エネルギーギャップ直下直上の)フロンティア電子構造が変化する様子を紫外光電子分光法(UPS)と逆光電子分光法(IPES)により直接的に捉えて、半導体としての電荷担体特性の変化を解明した。ことに、UPSとIPESでそれぞれ決定した固相のイオン化エネルギー閾値(I_s^<th>)と電子親和力閾値(A_s^<th>)から、フッ素置換数の増加に伴って各準位がいずれも約1.2eV安定化するため、電荷輸送ギャップエネルギーI_s^<th>-A_s^<th>はほぼ一定に保たれることが分かった。後者は、分子集合構造中の分子場の把握を念頭に置き、有機結晶中の分子に隣接分子が及ぼす電子分極の寄与を格子エネルギーの第一原理計算から捉えた。そして、静電格子エネルギーが分極の寄与を約30%まで含むことをまず明らかにし、しかしその寄与率が結晶構造や分子特性を明瞭に反映することがとくに電荷分離特性が顕著な分子の場合に認められることを明らかにした。
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Research Products
(4 results)