2007 Fiscal Year Annual Research Report
特異な分子特性/集合構造の混成による新しい電子系の開拓
Project/Area Number |
15073214
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 Kyoto University, 化学研究所, 教授 (10170771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 弘幸 京都大学, 化学研究所, 助教 (00283664)
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Keywords | 分子特性 / 集合構造 / 電子系 / 薄膜 / フロンティア電子構造 / 誘電率 / 多形 / エネルギー分散 |
Research Abstract |
本研究は、特異な分子特性と集合構造の混成による新しい電子系の開拓を念頭に置き、1)新奇な分子場が期待できる特徴的な分子の探索・調製、2)特徴的分子の集合化制御による分子場の形成・評価、3)特徴的分子の固有集合状態の光誘起等による外場効果の探査、4)新奇分子場や外場効果に基づく電子系の特性挙動の把握解明、を観点として薄膜、フロンティア電子構造、電子状態特性を軸に進めてきた。最終年度は、それらの成果を総括するとともに、再度基本に立ち返って分子性固体の構造-電子構造-電子物性相関の本質に関わる次の二つの研究を行った。 有機分子結晶の誘電率は、その電気的・光学的性質などを理解する上で不可欠な基本的物性量である。分子軌道法による孤立分子の分極率から求めた静的誘電率は実験値と良く一致するが、分極率を任意に構成原子へ割り振るこの方法は、軌道の混成や結合原子ごとの分極率の違いを正確に捉えている訳ではない。そこで、第一原理計算に基づき結晶内の分子分極も考慮した静的誘電率の計算方法を開発し、縮合多環芳香族炭化水素などの結晶に適用して、得られた計算値を実験値と比較した。その結果、この方法が様々な有機分子結晶の誘電率の算出や考察に有用であることが確認できた。 有機半導体のプロトタイプの一つで最近は有機電界効果トランジスタの活性層材料として関心を集めているペンタセンの自然酸化シリコン基板上の蒸着薄膜は、単結晶相、バルク相、薄膜相の多形を示す。未確定だったバルク相と薄膜相の構造を、視斜角入射X線回折法ことに後者ではその逆格子空間マップ法を適用して正確に決定した。得られた構造データを用いて密度汎関数法によるバンド計算を行い、単結晶相とバルク相のエネルギー分散の様子はほぼ等しいのに対し、薄膜相では分散の規模が大きくその異方性にも違いがあって二次元性が高いことを明らかにした。
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