2005 Fiscal Year Annual Research Report
分子性導体の電荷配列の極低温及び強磁場下X線による観測
Project/Area Number |
15073217
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
野上 由夫 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 教授 (10202251)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大嶋 孝吉 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 教授 (10114414)
神戸 高志 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 助手 (00277386)
池田 直 高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (00222894)
|
Keywords | 分子性導体 / 有機導体 / 有機超伝導体 / 低次元物質 / X線 / 構造解析 / 強磁場 / 強磁場 |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続き10Tという国内でも最高レベルの強磁場下極低温X線カメラの更なる高性能化に成功した。この装置の特徴は,強磁場下極低温下という極端条件下にもかかわらず超高感度写真法であり2次元的な情報が素早く手に入ることである。昨年度開発した装置では1)超音波モータを使用し磁場下で自由に回転可能で磁場中構造解析が可能になる初めての装置である,2)ヘリウム吹き付けクライオスタットを使用したため,窓散乱がカットできる,などの特長があった。通常の測定では充分なS/Nであるが,特に微弱な衛星反射測定は,空気の散乱や試料廻りのヘリウムの散乱により観測が難しい。この事をふまえ,磁場下で撮影可能な特に高S/Nなカメラを開発した。その原理は,集光法による疑似回転カメラである。回転機構を省略できるため窓散乱などを効果的に押さえる事が出来る。この10Tの磁場で7Kという温度まで撮影可能なカメラにより,ブラッグ反射の6桁落ちの微弱散乱を観測する事に成功した。磁場下で量子ホール効果に類似した特徴を示す低次元物質η-Mo4011のX線散漫散乱写真を撮影した所,比較的見えやすいCDW1形成に伴う衛星反射だけではなく,特に微弱なCDW2形成に伴う衛星反射を観測する事に成功した。この装置は低次元分子性導体のような,様々な波数,つまり予測不能な波数の変調構造が現れ,それが電子状態に大きな影響を及ぼす系の構造科学研究にとって不可欠となるであろう。この他θ-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4では,低温で2倍周期と3倍周期の変調構造が形成されるが,そのいずれもが短距離秩序で相転移は起こらない。これらはUやVによる電子相関に伴う電荷秩序と考えられている。いわば周期の違う電子の氷が混在している状態である。このような不均一系では外場に対して巨大応答を示す可能性があり,高電場下で巨大な非線形伝導やサイリスタ動作を見いだした。非線形伝導と変調構造との関連を調べるために電場および電流が印加可能なX線装置を開発し,電流によって変調構造に伴うX線散漫散乱の変化を観測した。その結果,低温で優勢であった2倍周期の短距離変調構造は電場によって抑えられ,相対的に3倍変調が優勢になることがわかった。
|
Research Products
(4 results)