2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15073223
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
薬師 久弥 分子科学研究所, 分子集団研究系, 教授 (20011695)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 薫 分子科学研究所, 分子集団研究系, 助手 (90321603)
中村 敏和 分子科学研究所, 分子集団研究系, 助教授 (50245370)
古川 貢 分子科学研究所, 分子集団研究系, 助手 (90342633)
秋田 素子 分子科学研究所, 相関領域研究系, 助手 (30370125)
|
Keywords | 分子導体 / 電荷秩序 / 赤外・ラマン分光 / 振動分光 / 金属・絶縁体転移 / BEDT-TTF |
Research Abstract |
この特定領域研究では電荷秩序相転移を起こす分子導体の相転移前後の電子状態を赤外・ラマン分光法と磁気共鳴法を用いて明らかにすることを目的としている。平成17年度は下のような研究を行った。 (1)BEDT-TTFの電荷量と振動数についての直線関係を再検討し、新たに、ν_<27>(ρ)=1398+140(1-ρ)(0【less than or equal】ρ【less than or equal】1)とν_2(ρ)=1447+120(1-ρ)(0【less than or equal】ρ【less than or equal】0.8)の関係を得た。この研究によりν_<27>が従来考えられていたよりもはるかに大きな振動数シフトを示すことが分かった。 (2)θ-(ET)_2CsZn(SCN)_4は電荷秩序系と安定な金属系との中間に位置する物質である。典型的な電荷秩序系であるθ-(ET)_2CsZn(SCN)_4と異なり、この物質では全温度領域で大きな振幅を持つ電荷秩序を観測できなかった。しかし、赤外・ラマンスペクトルに対称性の低下を示唆するバイブロニックバンドが観測された。これらを総合してかなり小さな振幅をもつ電荷秩序状態の存在が示唆された。低温における非線形伝導はこのような小さな振幅の電荷密度波と関係していると考えている。 (3)θ-(ET)_2CsZn(SCN)_4は相転移を起こした後、0.6の振幅をもつ電荷秩序状態を形成する。この物質の高温相は金属ではなく、同程度の振幅をもつ不均化した状態であることを明らかにした。局在した電荷が空間的にも時間的にもゆらいでいて秩序だっていない状態である。この金属と異なる異常な状態は電気抵抗にも表れており、また、NMRの実験とも整合する結果である。 (4)一次元電子系(TMTTF)_2X系の電荷状態に関して、NMR・ESR・X線測定により電荷配列状態を調べた。四面体アニオンを有するReO_4塩に対して常磁性中間相における電荷秩序転移、さらにアニオン転移にともなう電荷秩序再配列を発見した。また、NMRによるアニオン運動の解析・水素体と重水素体との結晶構造比較により、一次元カラム方向の長距離クーロン力が電荷秩序形成に重要な役割を果たしていることが分かった。
|