2005 Fiscal Year Annual Research Report
低次元有機導体における磁場誘起超伝導現象の探索と解明
Project/Area Number |
15073225
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
宇治 進也 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノマテリアル研究所, ディレクター (80344430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺嶋 太一 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノマテリアル研究所, 主幹研究員 (40343834)
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Keywords | 有機伝導体 / 強磁場 / 超伝導 |
Research Abstract |
2次元有機伝導体λ-(BETS)_2FeCl_4では、高磁場中でのみ超伝導が発現するという極めて不思議な温度-磁場相図をもつことを明らかしてきた。この磁場誘起超伝導カニズムはジャッカリーノ・ピーター効果(J-P効果)で説明される。J-P効果は、伝導電子とは別に、局在した常磁性モーメントが存在し、両者に負の交換相互作用が働いていれば起こりうる。置換系λ-(BETS)_2Fe_xGa_<1-x>Cl_4やλ-(BETS)_2FeCl_<4-x>Br_xの温度-磁場相図においても、その大まかな温度-磁場相図は,J-P効果で説明できることを示してきた。さらに、κ-(BETS)_2FeBr_4においても磁場誘起超伝導を発見し、低磁場と高磁場の超伝導相図をJ-P効果で(定性的に)説明した。ただ、κ-(BETS)_2FeBr_4においては、フェルミ面構造や内部磁場等が量子振動測定から決定されていないため、本年度はこの点を明らかにした。 κ-(BETS)_2FeBr_4は、約2.5KでFeスピンが反強磁性転移を起こすが、π電子との相互作用がさほど大きくないため、系全体が絶縁体になることはなく、約1.3Kで超伝導転移を示す。磁場を伝導面内に正確に平行になるようにかけると、低温で約10Tで磁場誘起超伝導相が出現する。κ-(BETS)_2FeBr_4の伝導面(ac面)に垂直方向に磁場をかけると、超伝導が0.3Tほどの磁場で壊れた後、抵抗は大きなこぶを持ちおよそ5.5Tで鋭く落ちる。その後、抵抗はほぼ磁場に依存しなくなるが、高磁場で短い周期のSdH振動が明瞭に観測できる。以前の研究から、5.5Tで反強磁性金属相から常磁性金属相へと転移していると考えられる。反強磁性では振動数の小さなδ振動が観測できる。δ振動の相当する小さなフェルミ面は、バンド計算から得られたフェルミ面からは説明できないため、Feモーメントが反強磁性秩序を起こし、そのポテンシャルをπ電子が感じ、フェルミ面が再構築された結果と考えられる。このδ振動の有効質量は1.1m_oであり、その他の振動成分α(5.2m_o),β(7.9m_o)と比較して軽い。また、5.5T前後でSdH振動を詳細に測定し、その周波数、有効質量の磁場変化を調べたが、転移点近傍で明瞭な変化は見られず、量子臨界挙動はさほど大きくないことを示唆している。
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Research Products
(16 results)