2004 Fiscal Year Annual Research Report
連続変位クラスター変分法による金属ガラス形成系の微視構造の研究
Project/Area Number |
15074201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
毛利 哲夫 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20182157)
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Keywords | バルク金属ガラス / クラスター変分法 / 経路確率法 / 理想ガラス転移温度 / 一次変態 / 結晶-液相変態 / T_0ダイアグラム |
Research Abstract |
ガラス形成能の優れた金属ガラスを得るための経験則は提唱されているが、その物理的根拠は必ずしも明らかになっていない。その一つの大きな理由は、微視的な原子配列と安定性に関する統計熱力学からの理解が不足していることによる。本研究の最終目的は、結晶周期性を有する合金系の相平衡の理論計算に大きな威力を発揮してきたクラスター変分法の、トポロジカルに乱れた構造に対する拡張版である連続変位クラスター変分法を応用することにより、平衡状態図と微視構造および金属ガラスの形成能の相関を理論的に明らかにすることにある。しかし、連続変位クラスター変分法は、現実の合金系への適用がなされておらず、従って初期の目的として、従来のクラスター変分法がガラス転移の平衡論的な大枠を記述し得るか否かに焦点を絞って計算を行った。 L10-disorder変態が、結晶-液体転移と同じく一次変態であることに着目し、L10規則相の自由エネルギーを、クラスター変分法の四面体近似式を用いて定式化を行った。長距離規則度を一般化された規則度と定義し、全ての短範囲規則度で微分極小化することにより、自由エネルギーを温度と規則度の関数として算出した。次に、各規則度に対する自由エネルギーの温度依存性を求めた。それぞれの自由エネルギーと液体のそれとの交点が、各規則度における融点を表す。これはT0状態図と称されているが、T0状態図には、ガラス転移に特徴的な三重臨界点が再現できた。この点を理想ガラス転移温度に対応させることができる。さらに、経路確立法を用いて、いろいろな冷却速度における、規則度の温度依存性を算出した。原子移動の素過程に、粘性の温度依存性を反映させることにより、ガラス転移に伴う内部状態の凍結を再現することができた。これらの結果は、クラスター変分法や経路確率法が、ガラス転移の平衡論的及びkineticsの大枠を記述できるものであることを示唆している。
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Research Products
(3 results)