2003 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱による融体・金属ガラスの構造ゆらぎとダイナミックス
Project/Area Number |
15074208
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福永 俊晴 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (60142072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大友 季哉 高エネルギー加速器機構, 物質構造科学研究所, 助教授 (90270397)
伊藤 恵司 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (80324713)
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Keywords | 金属ガラス / 水素吸蔵 / 中性子散乱 / X線回折 / 原子構造 / リバースモンテカルロ法 / 構造モデル / 組成ゆらぎ |
Research Abstract |
昨今の金属ガラスの材料研究は驚くべき進歩を遂げ、その形態は薄膜からバルク状のものとなり、ガラスとしての安定性も飛躍的に改良されている。しかし、金属バルクガラスの安定性と原子配列の関係は全く明らかになっていないのが現状である。本研究では中性子散乱の特徴を最大限に利用して構造データを得るとともに、X線回折や電子線回折から得られたデータと互いに補足的に活用し、新しい構造の側面を見出すことを目的とする。 アモルファスと結晶の違いを観察するために、TbFe_2ラーベス結晶が水素を吸蔵するとアモルファス化することに着目し、結晶状態とアモルファス状態の構造を観察することによって、アモルファス合金の構造の特徴を明らかにする研究を行った。中性子回折の特徴を用いれば水素を見ることが容易となる。それに対して、X線回折では水素原子を吸蔵することによって変化する金属原子の配列を観察することが出来る。これは中性子とX線が持っている構成元素に対する散乱能の違いによるものである。この特質を利用して、X線回折でアモルファスTbFe_2D_<3.0>の構造を観察し、水素吸蔵することによるTbとFe原子の配列変化を観察した。さらに中性子回折によって、水素原子(重水素:D)の位置する多面体やそれを構成する原子の種類をあきらかにした。すなわち、水素原子は4面体ユニット内に位置し、かつTb原子が多く構成する4面体ユニットに入りやすいことを明らかにすることができた。 さらに、中性子回折ならびにX線回折実験から得られた構造因子S(Q)を基にしてリバースモンテカルロ法によって三次元構造モデルを構築した。このモデルからも水素原子の存在位置がより明確になるとともに、金属(Tb, Fe)原子配列に組成揺らぎが生じていることが分かった。この結果は、さらに小角散乱実験による揺らぎの観察の必要性、そして動的構造との関係など、金属ガラスの構造研究の重要性とその展開の必要性を示唆している。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] K.Itoh, K.Kanda, K Aoki, T.Fukunaga: "X-ray and Neutron Diffraction Studies of Atomic Scale Structures of Crystalline and Amorphous TbFe_2D_x"J.Alloys & Compounds. 348. 167-172 (2003)