2007 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱による融体・金属ガラスの構造ゆらぎとダイナミックス
Project/Area Number |
15074208
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福永 俊晴 Kyoto University, 原子炉実験所, 教授 (60142072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 恵司 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (80324713)
大友 季哉 京都大学, 高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所, 准教授 (90270397)
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Keywords | 金属ガラス / 中性子回折 / 中性子非弾性散乱 / 多面体解析 / リバースモンテカルロ法 / 20面体構造 / プリズム構造 / ボゾンピーク |
Research Abstract |
金属ガラスの安定性は金属ガラスを構成する短範囲構造ユニットや中距離構造と深い関係があると考える。さらに、非平衡状態では安定になるための原子の動きがあることから、原子の運動とも深く関わっていると考えられる。熱的に安定なCu-Zr金属ガラスは20面体的な構造ユニットが多く存在するが、Ni-Zr金属ガラスはNi-Zr系の安定結晶を構成している三角プリズム構造が多く存在することが明らかになった。そのNi-Zr系金属ガラスにA1などの第三元素を添加することにより熱的安定性が増すが、そのときの構造変化を調べた結果、A1添加により三角プリズム構造が減少し、20面体的な構造ユニットの増加が観察された。このことは金属ガラスの熱的安定性は構造学的に20面体的な構造ユニットが強く関わっていることを示唆している。Cu-Zr系金属ガラスに第三元素としてA1を添加したときの構造変化を調べると、20面体的な構造ユニットの構造の急激な増加は見られないが、正20面体的なユニットの増加が観察された。この変化を、中性子非弾性散乱を用いたダイナミックス観点から検討を行った結果、5meV付近に観察される低エネルギー励起(ボゾンピーク)の強度がA1を添加することによって低下することが明らかになった。この現象は金属ガラスにおける自由体積(free volume)の減少と解釈することが出来ることから、第三元素の添加による金属ガラスの熱的安定性は系の自由体積の減少による原子の動きの低下によるものと解釈することができる。すなわち、金属ガラスの熱的安定性をよくするためには、系の構成構造ユニットである正20面体を増加させ、かつ自由体積を減少させることであることが明らかになった。
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Research Products
(10 results)