Research Abstract |
金属ガラスを適切に加工し,所定の機能を持たせ安全に使用するためには,金属ガラスの複雑な熱力学的な負荷条件(環境)下における各種スケールの変形・応力(熱力学的)状態の把握,微視組織の変化(変態),損傷,破壊を誘引するメカニズムの解明,強度評価等を必要とする.そのため,一般熱力学的負荷条件下の金属ガラスの超塑性,変形・破壊の実験的検討とその評価,比例・非比例ひずみ履歴を伴う高ひずみ速度負荷試験による実験的検討と構成式の定式化,電子顕微鏡(SEM),原子間力顕微鏡(AFM),ナノインデンテーション法を用いて破壊機構の観察と局所領域の応力および強度の評価を行う.場の理論を援用したアモルフォスから結晶に至る構成式の構築,それを検証する分子動力学的評価,マルチスケール有限要素法による局所領域の変形,応力および強度特性と巨視的な応力・変形場との関連を明らかにする.平成15年度における研究実績として,金属ガラスの構成式定式化の枠組みについて詳細に検討し,各種組み合わせ応力下における,局所的なfree volumeの濃度に依存した構成式の一形式に対して,種々の応力状態下における試験結果から,構成式の形式を同定する手法を示した.さらに,金属ガラスに特化して,破壊の前兆を予知する,摂動法ならびに局所分岐解析法を定式化した.金属ガラスの一連の変形過程を評価するために,運動方程式とfree volumeの拡散方程式を連成して解析する有限要素方程式を構築した.何れも各種スケールの実験を重ねることで,構成式ならびにfree volumeの拡散方程式が特定でき,実用に供することが可能となる.場の理論による金属ガラスの変形の記述の枠組みの構築,非晶性ポリマーの大規模分子動力学法を援用した金属ガラスに対する分子動力学法の定式化を行った.さらに,金属ガラスの破壊メカニズム解明に向け,AFMによる評価法を検討し,疲労試験片の適切な形状・寸法を決定した.現在申請のナノインデンテーション基本装置が導入され,材料の微視組織を観察し,変形・応力状態を調べるためのデータを収集している.
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