Research Abstract |
本研究では,一般熱力学的負荷条件下の金属ガラスの超塑性,変形・破壊の実験的検討とその評価,比例・非比例ひずみ履歴を伴う高ひずみ速度負荷試験による実験的検討と構成式の定式化,電子顕微鏡(SEM)・原子間力顕微鏡(AFM)・ナノインデンテーション法による金属ガラスの破壊機構の観察と局所領域の応力および強度の評価を行う.平成16年度における研究実績として,Zr基バルク金属ガラスZr_<55>Cu_<30>Ni_5Al_<10>について,平滑材の疲労試験を行ってS-N曲線を求めるとともに,C(T)試験片を用いて疲労き裂伝ぱ試験を実施した.金属ガラスのき裂伝ぱは,結晶金属よりもΔKの変化に鈍感であり,より安定な疲労き裂伝ぱ挙動を示した.一方,き裂伝ぱの下限界値ΔK_<th>は,1.8MPa^<1/2>であり,鉄鋼材料の下限界値(R=0.1に対しては,3〜8MPam^<1/2>程度)よりも低いが,ヤング率が同程度の高強度アルミニウム合金の下限界値(1MPam^<1/2>程度)よりも大きい.また,本材料の場合,き裂開閉口をほとんど生じず,そのため,き裂伝ぱ挙動に対する応力比の影響は小さかった。次に,同平滑材に100mN〜1000mNの押し込み荷重でのマイクロインデンテーションを実施し,純Cuの超微細結晶粒材(Ultra-Fine Grain ; UFG)の結果と比較した.UFG材の硬度上昇が接触深さ6μm以下の領域で生じるのに対し,金属ガラスでは1μm以下で硬度上昇を生じることが示された.バルク硬度は金属ガラスがUFGに対して非常に高い値を示したが,これは純CuとZr-Al-Ni-Cuの構成元素の差が現れたものと考えられる.最後に,分子動力学によるNi-Alアモルファス合金の引張シミュレーションを行い,金属ガラスの変形挙動を原子レベルから検討した.変形下における個々の原子弾性剛性係数の正値性を調べた結果,アモルファス構造中では13原子20面体クラスター等の短距離秩序構造の中心原子が高い安定性を示すのに対し,クラスターの外郭原子やクラスターとクラスターの境界原子は原子弾性剛性係数がほぼ零で不安定であることが示された.さらに,原子弾性剛性係数の正値性の変化をモニターすることにより,クラスターの崩壊や再構成が動的・連続的に把握できることが示された.
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