Research Abstract |
本研究では,一般熱力学的負荷条件下の金属ガラスの超塑性,変形・破壊の実験的検討とその評価,比例・非比例ひずみ履歴を伴う高ひずみ速度負荷試験による実験的検討と構成式の定式化,電子顕微鏡(SEM)・原子間力顕微鏡(AFM)・ナノインデンテーション法による金属ガラスの破壊機構の観察と局所領域の応力および強度の評価を行う.平成18年度は,金属ガラスの疲労き裂伝ぱの検討として,Zr基バルク金属ガラス切欠き材を用い平面曲げ疲労試験を行った.その結果,切欠き係数と応力集中率がほぼ等しく,切欠き感度が非常に高いことが示された.また,せん断帯が発生した直後に,その底部が開口することによって疲労き裂が形成されるメカニズムを明らかにした.さらに,き裂の伝ぱモードがせん断型から引張型へと遷移するか否かによって最終的な破断形態が大きく異なることを示した.せん断型き裂が支配的な破壊は,き裂先端にせん断型き裂が逐次発生し進展することによって生じている.分子動力学による検討では,ひずみ・応力制御,横方向Poisson収縮の有無などの外部境界条件による,アモルファス金属ならびにナノ多結晶体の不安定挙動(ひずみ制御下では応力急減,応力制御下ではひずみ急増)の変化について体系的な研究を行い,内部不均一を有する系の大域的・局所的安定性について詳細に検討した.通常行われている,横方向応力零・ひずみ制御引張の変形条件以外では,系の不安定挙動は系・局所の不安定性で評価できること,また,横方向Poisson収縮に対して拘束が生じるとボイド状の空孔が形成すること,などを明らかにした.これは,引張下で塑性流動のみ観察される原子シミュレーションと,実際は引張下でほとんど延性を示さない金属ガラスの内部メカニズムのギャップを考察する一助になるものと考える.
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