Research Abstract |
著者らはこれまでに,逆懸垂型るつぼ回転振動法によりLa-Al-Ni系合金,Fe-Ni-B系合金,Fe-Cr-B系合金,Fe-Cr-P系合金の液体粘度を測定してきた.本振動法では,融点を超えた高温での合金液体の低粘度(1〜10^2mPa・s)の測定には有効であったが,ガラス遷移温度(Tg)から融点(Tm)近傍の高粘度領域(10^5〜10^<12>mPa・s)の測定は困難であった.特に,金属ガラス形成能の大きなZr系合金は,表面に強固な酸化皮膜を形成しやすいため,従来の平板法などによる液体粘度測定は非常に困難であった.本研究では圧子貫入法による粘度測定装置を用いることにより,ガラス遷移温度,融点近傍の液体及び過冷却液体の粘度測定法を確立することを目的とした. 標準試料はすでに粘度既知のSiO_2,Al_2O_3,NaO_2,K_2Oを主成分とする無機ガラス(NIST SRM 710a)を使用した.測定試料は,Zr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5金属ガラス合金を用いた.測定雰囲気はヘリウムガス1気圧で行い,荷重は5g(6.3×10^4Pa)で行った。測定温度範囲は,ガラス遷移温度(Tg)から融点(Tm)を超えて1000℃までとし,昇温速度を20℃及び100℃/minで測定した.目的の温度に到達後,7℃/minで急冷処理を行った. Zr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5金属ガラス合金中への加熱中の圧子貫入深さをしらべた。昇温速度20℃/minでは,融点で圧子は貫入したが,850℃付近で圧子の貫入が停止した.その後1000℃まで昇温し,7℃/minで急冷処理を行うと,試料の収縮が750℃付近まで見られ,約50℃の過冷温度が確認できた.また、本金属ガラス合金におけるガラス遷移温度(Tg)直上の過冷却液体の粘度は,7.7×10^<11>(cP=mPa・s)となり,結晶化温度(T_x)直前の粘度は,1.6×10^<10>(cP=mPa・s)となった。融点(Tm)直上の粘度は3.9×10^7(cP=mPa・s)となった.Fulcherの関係式より求めたlnηと1/Tの関係から、ガラス形成能の低いFe-Ni-B系合金液体^<(1)>と比較すると,Zr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5金属ガラス合金の粘度は著しく高いが,粘度の温度依存性は小さいことが認められた.
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