2004 Fiscal Year Annual Research Report
MDおよび統計熱力学手法による金属ガラスのナノ構造解析
Project/Area Number |
15074220
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
小野寺 秀博 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料研究所, 所長 (20354144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下野 昌人 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算材料科学研究センター, 主任研究員 (30354153)
阿部 太一 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算材料科学研究センター, 主任研究員 (50354155)
鈴木 哲郎 筑波研究学園, 教授 (70045988)
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Keywords | 臨界冷却速度 / 会合溶体モデル / 短範囲規則度 / MDシミュレーション / 金属ガラス / 過冷却液相 / 中範囲規則構造 / 構造緩和 |
Research Abstract |
アモルファス形成合金系における液相の混合のエンタルピーは、強い温度依存性を持ち、温度の低下に伴って低下するが、これまでの液相の熱力学評価では、高温側の熱力学特性のみを用いているため、こういった温度依存性や低温域の熱力学特性を再現できない。そこで、会合溶体モデルを用い、幅広い温度域で得られた熱力学特性の測定値と組み合わせて液相の自由エネルギー関数を評価し、そこから駆動力および臨界冷却速度を求めた。その結果、これまでの手法に比べ、結晶化の駆動力、臨界冷却速度共に大きく低下し、アモルファス形成合金系では、低温域における熱力学特性を考慮しなければならないことが明らかとなった。 分子動力学(MD)法で液相急冷による金属ガラスの生成過程をシミュレーションする場合、計算機の能力による制限から、実験の10^<10>倍におよぶ非常に速い冷却速度しか再現できないため、臨界冷却速度など従来のガラス形成能の尺度を評価することができなかった。そこでまず、ガラス相および過冷却液相における構造緩和過程をシミュレーションし、正20面体型クラスターの増加とともに自由体積が減少すること、クラスターの分布は数ナノメートル程度の非一様な中範囲規則構造を有していること、更に充填率の高い液相では拡散が抑えられ緩和時間が急激に増大することなどを明らかにした。このことから、過冷却液相の充填率がMDシミュレーションで計算可能なガラス形成能の尺度として使えることを提唱し、Zr-Cu-Al系で実験と整合的な結果を得た。また、合金間の大きな原子サイズ差が最も充填度を高めるのに寄与し、混合熱の効果は副次的であることや、正の混合熱を導入することで、2相ガラス組織など新しいタイプのナノ組織を制御できる可能性を示した。特に後者の計算は今年度CPUを増設して大規模になったクラスターシステムと、そこで効率よく働く並列計算コードの開発に拠るところが大きい。
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