2006 Fiscal Year Annual Research Report
MDおよび統計熱力学手法による金属ガラスのナノ構造解析
Project/Area Number |
15074220
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
小野寺 秀博 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料信頼性センター, センター長 (20354144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下野 昌人 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算科学センター, 主任研究員 (30354153)
阿部 太一 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算科学センター, 主任研究員 (50354155)
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Keywords | 金属ガラス / 準正則溶体近似 / 短範囲規則度 / 中範囲規則構造 / 相分離 / MDシミュレーション / 過冷却液相 / 正20面体型クラスター |
Research Abstract |
統計力学的手法を用いた解析として、まず液相中の短範囲規則度を考慮できる会合溶体モデルを用い、ガラス形成能の高い合金系として知られるZr基合金に関し、液相のCLAPHAD法による自由エネルギー関数の熱力学評価を行った。得られた自由エネルギー関数を用いて臨界冷却速度を求めた結果、短範囲規則度の効果を取り入れることで、過冷却液相が安定化し、結晶化の駆動力、臨界冷却速度共に大きく低下することが判った。 過冷却液相における相分離の有無は、ガラス材料の微細組織形成および結晶化挙動に大きく影響する。そこで次にThermo-Calcデータベースを援用し準正則溶体近似を用いて液相の自由エネルギーを評価し、種々の三元合金系につき金属ガラスを形成する組成域において過冷却液相中で相分離の起こる可能性を熱力学的に評価した結果、Cu-Ti-Zr系を除いてはガラス形成能の高い組成では相分離が見られないことが判った。 MD法を用いた解析としては、まず原子サイズ比と混合熱を変化させた種々の三元モデル合金系につき液相冷却シミュレーションを行ない、原子サイズ・混合熱と冷却速度の違いにより過冷却液相およびガラス相の微細組織がどう変化するかを調べた。特に過冷却液相中の相分離の有無に関しては上記の熱力学評価と一致する結果を得ている。次に、ガラス転移温度直下でガラス相を等温保持するシミュレーションを行ない構造緩和の様子を調べ、ガラス相中の基本構造は正20面体型クラスターが連結してできたネットワークであること、構造緩和に伴いそのネットワークが成長しガラス相の全域を覆うこと、そしてそのネットワーク構造の非一様性がガラス相特有の中範囲秩序構造の幾何学的な源であることを明らかにした。
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