2006 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質立体構造形成に及ぼす溶媒効果の分子論的解明
Project/Area Number |
15076203
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 正弘 京都大学, 国際融合創造センター, 教授 (90195339)
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Keywords | 蛋白質 / 水和 / 自由エネルギー / 積分方程式論 / バイオインフォマティクス / ドラッグデザイン / エントロピー / エンタルピー |
Research Abstract |
系統的な理論解析と綿密な考察に基づき、単純ではあるが蛋白質立体構造形成の物理的本質を捉えた新しい自由エネルギー関数を構築した。その主要成分は、定容過程で考えた水和エントロピーと折り畳みに起因する脱水和のペナルティーである。水和エントロピーは形態熱力学に基づいて超高速で計算する。その場合の4つの係数は、多極子モデルの水に分子性流体用積分方程式論を適用して決定する。ところで、蛋白質研究のコミュニティーには、デコイ(偽物)セットというものが数多くの蛋白質に対して用意されている。これは、コンパクトではあるが天然構造とは異なる千通り近い立体構造のデータセットである。天然構造に極めて類似した構造も含まれる。我々は、10種類の蛋白質のデコイセットと天然構造に対して、構築した自由エネルギー関数をテストした。すべてにおいて天然構造を自由エネルギー関数最低の構造として射当てることに成功した。本方法は、数多くの候補構造から最良の構造を選び出す場合に最適であり、バイオインフォマティクスの手法と統合することにより、アミノ酸配列から蛋白質の立体構造を予測するための実践的な方法を開発できる可能性が高い。非常に大きな蛋白質や会合体をも扱うことができ、ドラッグデザインへの応用も夢ではない。 溶媒中で2個の溶質が接触した場合に生じる系の熱力学量の変化を理論的に解析した。結果は、溶質が疎溶媒性か親溶媒性か、溶質の接触が定容過程と定圧過程のどちらで起こるかによって複雑にかつ大きく変化する。自由エネルギー変化は定容過程と定圧過程で不変であるが、両過程でエネルギー変化(1気圧では、定圧過程のエネルギー変化とエンタルピー変化はほぼ等しい)とエントロピー変化への配分が大きく変化する。水溶液中の多くの物理化学過程に対して実験的に知られているEntropy-Enthalpy Compensationが定性的に再現できた。
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Research Products
(14 results)