2003 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによる蛋白質フォールディング・分子認識機構の解明
Project/Area Number |
15076209
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
池口 満徳 横浜市立大学, 大学院・総合理学研究科, 助教授 (60261955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木寺 詔紀 横浜市立大学, 大学院・総合理学研究科, 教授 (00186280)
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Keywords | 分子動力学 / 蛋白質 / フォールディング / アンフォールディング / 並列計算 / 剛体分子動力学 / 遷移状態 / 膜蛋白質 |
Research Abstract |
蛋白質のフォールディング機構や分子認識機構の解明は重要な課題であるが、分子シミュレーションによる理論的な研究と、実験研究を組み合わせることにより、原子レベルでその詳細の理解が可能となる。しかし、蛋白質は、巨大かつ非均一で、関わる時間スケールもフェムト秒のオーダーからミリ秒、秒のオーダーまで幅広い。そのような対象を分子シミュレーションで扱うには、巨大な系を効率的に扱え、しかも精度の高い計算法、ソフトウエアの開発が必要不可欠となる。そこで、本研究では、高効率でかつ精度の高い分子動力学ソフトウエアパッケージMARBLEを開発した。このMARBLEでは、部分剛体分子動力学法というアルゴリズムを開発した。従来法であるRATTLE法と比較して、本方法では全エネルギーの保存がよい安定な計算を実現した。また、効率面では、並列計算において、F1-ATPaseの溶媒分子を含めた29万原子系でも128CPUを用いて約1日半で1nsの計算が終わる。また、生体膜や膜蛋白質の分子シミュレーションで必要な特別なアンサンブル(NPAT, NPγT)の実現法について新たな方法を開発し実装した。 このMARBLEを用い、特定領域代表の桑島研究室での実験結果の蓄積がある蛋白質αラクトアルブミンの熱変性シミュレーションに着手した。この結果、N末端に1つだけメチオニンが付加しただけの変異型が野生型と比べ、変性速度が速くなるという実験と一致した結果を得た。また、変性過程を統計解析することにより、変性経路には実験的に得られているフォールディングの遷移状態と一致する構造群を通過することを見出した。このことは、計算結果の妥当性を示すとともに、フォールディングの遷移状態の原子レベルの構造が得られたと考えられる。
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[Publications] M.Ikeguchi: "Partial Rigid-Body Dynamics in NPT, NPAT and NPγT Ensembles for Proteins and Membranes."Journal of Computational Chemistry. 25. 529-541 (2004)
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[Publications] Y.Akamatsu, D.Dziadkowiec, M.Ikeguchi, H.Shinagawa, H.Iwasaki: "Two different Swi5-containing protein complexes are involved in mating-type switching and recombination repair in fission yeast"Proceedings of National Academy of Science of U.S.A.. 100. 15770-15775 (2003)
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[Publications] S.Nakamura, M.Ikeguchi, K.Shimizu: "Dynamical Analysis of tRNA^<Gln>-GlnRS Complex using Normal Mode Calculation."Chemical Physics Letters.. 372. 423-431 (2003)