2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15078204
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
湊 長博 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (40137716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 宣規 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教授 (60243961)
木梨 達雄 京都大学, 医学研究科, 教授 (30202039)
渡邊 武 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (40028684)
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Keywords | 免疫監視 / 白血病 / アナジー / 低分子G蛋白 / SPA-1 / Rap1 / 癌抑制遺伝子 / 免疫記憶 |
Research Abstract |
Rap1 GTPase-activating protein,SPA-1,は、リンパ造血組織における主たるRap1 G蛋白の不活性化因子である。Rap1 G蛋白のリンパ造血系細胞における機能を明らかにする目的で、SPA-1遺伝子破壊(SPA-1-/-)マウスを作成し、その形質解析をおこなった。(1)SPA-1-/-マウスは、生後3ヶ月以降から加齢に伴って末梢T細胞におけるRap1GTPの過剰の蓄積を示し、これに平行してT細胞の不応答性が進行、生後1年以内に強いT細胞免疫不全状態となった。生化学的解析から、この不応答性は抗原刺激後の過剰のRap1GTP生成によるRas依存性ERK活性化の抑制によるアナジーによるものであり、SPA-1-/-マウスにおいては抗原刺激を受けたT細胞は一次応答の後、免疫記憶細胞へと分化せずすべてアナジーに陥ることによりT細胞免疫不全に至ることが明らかとなった。(2)SPA-1-/-マウスは、T細胞免疫不全に続発して生後1年以降ほぼ全例白血病を発症した。自血病の病型は、慢性骨髄性白血病(CML)、その急性転化、慢性リンパ性白血病(CLL)と多彩であり、一部は骨髄異形成症(MDS)に酷似した症状を呈した。多くのマウスで重症の貧血も認められた。前白血病のSPA-1-/-マウスの骨髄において、多能性前駆細胞分画において選択的なRap1GTPの過剰の蓄積とそれに伴う細胞増加が認められ、さらに活性型Rap1の遺伝子導入によって正常骨髄前駆細胞の増殖亢進が見られたことから、この白血病の発症は過剰のRap1GTP生成による多能性造血前駆細胞の異常増殖によることが強く示唆された。さらに、SPA-1-/-マウス由来白血病細胞株にSPA-1遺伝子を再導入することによって白血病原性が完全に消失することが示され、SPA-1遺伝子は造血系における癌抑制遺伝子であることが示された。SPA-1-/-マウスにおける白血病の発症は、明らかにT細胞免疫不全状態に続発することから、免疫監視機構の破綻が臨床的白血病発症に大きな役割を果たしていることが強く示唆され、SPA-1-/-マウスは自然発生腫瘍における免疫監視機構の意義を明らかにする上で極めて有用なモデルを提供しうることが期待される。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Ishida, D. et al.: "Myeloproliferative stem cell disorders by deregulated Rap1 activation in SPA-1-deficient mice."Cancer Cell. 4. 55-65 (2003)
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[Publications] Ishida, D. et al.: "Antigen-driven T cell anergy and defective memory T cell response via deregulated Rap1 activation in SPA-1-deficient mice."Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 100. 10919-10924 (2003)
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[Publications] Okazaki, T.: "Autoantibodies against cardiac troponin I are responsible for the dilated cardiomyopathy in PD-1 deficient mice."Nature Med.. 9. 1477-1483 (2003)
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[Publications] Katagiri, K. et al.: "RAPL, a Rap1-binding molecule that mediates Rap1-induced adhesion through spatial regulation of LFA-1"Nature Immunol.. 4. 741-748 (2003)
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[Publications] Oya, K.et al.: "Appearance of the LAT protein at an early stage of B-cell development and its possible role."Immunology. 109. 351-359 (2003)
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[Publications] Sanui, T. et al.: "DOCK2 is essential for antigen-induced translocation of TCR and lipid rafts, but notPKC-theta and LFA-1, in T cells."Immunity. 19. 119-129 (2003)