2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15078204
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
湊 長博 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (40137716)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 雅一 京都大学, 生命科学研究科, 助教授 (40211479)
田中 義正 京都大学, 生命科学研究科, 助手 (90280700)
|
Keywords | 免疫監視 / G蛋白 / 白血病 / SPA-1 / T細胞 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、Rap1シグナルの免疫造血系における役割の個体レベルでの研究を推進した。Rap1シグナル不活化因子SPA-1遺伝子の被壊マウスが、腹腔内B1細胞の加齢に伴う増加とこれらによる自己抗体(抗核抗体、抗DNA抗体)の産成を示し、最終的にヒト・ループスに酷似した自己免疫性腎炎を自然発症することを見いだした。DNAアレイ解析により、同マウスの骨髄未熟B細胞ではRap1の構成的活性化により免疫グロブリン遺伝子L鎖の再構成と受容体編集に関与する因子OcaBの過剰発現が認められた。これはRap1によるp38MAPKの活性化とこれによるでは、OcaB転写因子Crebの活性化によるものであった。OcaBの過剰発現により骨髄未熟B細胞では遺伝子L鎖遺伝子の発現偏位がおこり、その結果抗体レパートリーの異常が誘導されるものと考えられた。特に腹腔内B1細胞においては、L鎖遺伝子レパートリーの強い偏位とともに、多くの細胞でカッパ鎖とラムダ鎖の二重発現(対立遺伝子排除の欠質)が認められた。これは自己反応性受容体の編集異常を示すものであり、不完全な編集を行った自己反応性骨髄未熟B細胞が完全に自己反応性を解消しえないまま、選択的に腹腔内へB1細胞として集積させられたものと考えられた。この点は、SPA-1遺伝子破壊マウス骨髄細胞の正常マウスへの移植実験によっても確認された。これらの結果は、Rap1が骨髄未熟B細胞における自己感知シグナルとして機能していること、またB1細胞の特徴的な体内分布はそのレセプターの特異性(自己反応性)により決定されていることを示すものである。近年、ヒトの研究においてもB細胞の自己寛容においては、その容体編集異常が最も主要なメカニズムであることが報告されてきているが、本マウスは容体編集異常が実際に全身性自己免疫病の発症にいたることを明確に示したものである。さらに、これらのマウスの一部は、抗赤血球抗体を伴うB1紺胞性のリンパ性白血病を発症した。これは、自己免疫性溶血性貧血や血小板減少症をともなうヒト慢性リンパ性白血病(CLL)にきわめて酷似した病態である。ヒトCLLの原因は未だに不明であり、自己免疫病態と白血病が共存する病態として長らく注目されてきているが、本病態モデルマウスは、B細胞の自己免疫応答性と白血病化の機構を理解する上で非常に重要なまモデルを提供しうるものと考えられる。
|
Research Products
(6 results)