2006 Fiscal Year Annual Research Report
核移植クローン技術を用いたゲノム再プログラム化機構の解析
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15080210
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小倉 淳郎 独立行政法人理化学研究所, 遺伝工学基盤技術室, 室長 (20194524)
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Keywords | 核移植クローン / 生殖細胞 / 胚性遺伝子 / マウス / eIF-1A / 始原生殖細胞 / 体細胞 / 幹細胞 |
Research Abstract |
胚および産子に異常を生じる体細胞核移植クローン技術を利用することにより体細胞ゲノムと生殖細胞ゲノムの相違が明らかされるはずである。この問題点の理解への近道はおそらく、geneticな要因をできる限り排除してepigeneticな要因に限定でき、ランダムでなく定型的な異常であり、そして発生のできるだけ初期に現れる現象の解析にある。これらの条件を満たす解析対象の一つがマウスの初期胚である。マウスの胚性遺伝子の発現は小規模ながら1-cell後期から始まる。今年度は2-cellに始まるmajor zygotic gene activation (ZGA)の遺伝子発現パターンをドナーゲノムの再プログラム化の指標として解析を開始した。 各遺伝子の発現量解析では、1個の胚で安定して発現が定量できるDppa2、Dppa3、Dppa4、ERV-L、eIF-1A、Hdac1を対象とした。IVFコントロール胚と比較すると、いずれの遺伝子の発現量も遺伝子型(B6D2F1およびB6x129)およびドナー細胞種(卵丘細胞、線維芽細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、始原生殖細胞)に依存して変化しており、そのパターンは4-cell以降の胚発生率や産子率と関連する傾向が見られた。最も低い発生率を示す造血幹細胞クローンはこれらの6つの遺伝子のうち5つの遺伝子で発現が低下していた。標準的なマウス体細胞クローンであるB6D2F1卵丘細胞クローンでは4つの遺伝子で発現が低下しており、一方良好な発生を示すB6x129神経幹細胞クローンでは1つの遺伝子のみ有意に発現異常が見られた。興味深いことに始原生殖細胞(PGC)クローンは、胎齢後期のPGC由来になると徐々に発現が改善する傾向が見られ、ゲノム再プログラム化が正常に行われるようになることが示唆された。
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