2006 Fiscal Year Annual Research Report
胚発生におけるゲノムDNAメチル化の機能と調節機構
Project/Area Number |
15080212
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岡野 正樹 独立行政法人理化学研究所, 哺乳類エピジェネティクス研究チーム, チームリーダー (50360863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹林 慎一郎 独立行政法人理化学研究所, 哺乳類エピジェネティクス研究チーム, 研究員 (50392022)
小田 昌朗 独立行政法人理化学研究所, 哺乳類エピジェネティクス研究チーム, 研究員 (10391905)
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Keywords | エピジェネティクス / DNAメチル化 / Dnmt1 / Dnmt3 / Rhox / ES細胞 / マウス / 発生 |
Research Abstract |
DNAメチル化は、細胞分裂を超えて次の細胞世代に伝達しうる遺伝子発現制御機構、すなわちエピジェネティクス分子機構のひとつである。これまで細胞分化能や組織特異的遺伝子発現と、細胞種特異的、遺伝子特異的なDNAメチル化プロファイルとの相関関係が数多く報告されてきた。しかし、実際の個体において組織特異的遺伝子発現とDNAメチル化プロファイルの因果関係を遺伝学的に明確に示した例はきわめて少ない。我々は、DNAメチル化酵素による遺伝学的解析により、胚発生、幹細胞、細胞分化におけるDNAメチル化によるエピジェネティクス機構の役割を明確にすることを目的としている。今年度は、昨年度の報告書に記述したPsx1(現在Rhox6と呼ばれる)およびその周辺ゲノム領域Rhoxクラスターをさらに詳細に解析した。その結果、発生特異的に制御されるDNAメチル化酵素Dnmt3による細胞系列特異的DNAメチル化が、Rhoxクラスターを含む広範なゲノム領域の内部細胞塊/エピブラスト系列特異的な遺伝子発現抑制に主要な役割を果たすことを、実際のマウス個体を用いて遺伝学的に示す成果が得られ、論文発表した(Oda et al. 2006)一方、細胞分化におけるDNAメチル化機構の主要な機能は分化形質の維持であると考えられてきた。このことは、分化がまだ起こっていない幹細胞ではDNAメチル化による制御機構がなくても機能維持ができる可能性を示唆する。この仮説を検証するため、我々は哺乳類の主要なDNAメチル化酵素をすべて機能欠損した胚性幹細胞(TKO ES細胞)を樹立した。その結果、TKO ES細胞はDNAメチル化を事実上消失していながら、未分化性、増殖能、機能的ヘテロクロマチンの維持を行うことを見いだし、上記仮説の正しいことを示した(Tsumura et al. 2006)
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