2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15081210
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小川 渉 神戸大学, 医学系研究科, 助教授 (40294219)
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Keywords | Interleukin-6 / 肥満 / インスリン抵抗性 / 肝糖産生 / 糖新生 |
Research Abstract |
本研究計画は脂肪細胞に発現する遺伝子の機能の解析を通じて、肥満や肥満関連疾患の病態の解明と新規な治療法の開発を目指すものである。今年度は脂肪細胞から分泌され、インスリン抵抗性を惹起する因子の候補の一つであるInterleukin-6(IL-6)の機能についての検討を進めた。肥満インスリン抵抗性モデル動物であるdb/dbマウスの脂肪組織ではIL6のmRNAの発現が対照マウスと比較して2倍程度増強しており、血中濃度の増加も認めた。db/dbマウスにIL-6の中和抗体を投与すると、耐糖能が改善し、高インスリン正常血糖クランプ解析によって、末梢糖利用率の改善に起因するインスリン抵抗性の減弱が生じることが明らかとなった。この知見は、IL-6が肥満マウスにおけるインスリン抵抗性惹起因子の一つであることを示すものである。転写因子STAT3は糖新生系酵素遺伝子の発現を抑制することにより、肝糖産生抑制に重要な機能を果たす。今回の研究において、食後インスリン濃度の上昇により肝臓でSTAT3がリン酸化し、活性化することを見出した。IL-6遺伝子を欠損したマウスやIL-6の中和抗体を投与した健常マウスでは、インスリンによる肝臓のSTAT3活性化が完全に抑制され、インスリンによる肝糖産生も抑制能も減弱していた。このことは、IL-6がインスリンによる肝糖産生抑制に重要な機能を果たすことを示す知見である。すなわち、IL-6は糖代謝制御に関し2面性を有する可能性が示唆され、肥満状態における持続性かつ比較的高いレベルでの血中IL-6濃度の増加は末梢糖利用率の低下を介したインスリン抵抗性を惹起するが、食後のインスリン作用による肝臓での生理的なレベルでのIL-6濃度の増加は糖産生抑制という生理的機能を媒介する因子であると考えられた。
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Research Products
(3 results)