Research Abstract |
H19年度はH18年度に収集した訴訟当事者,代理人弁護士,一般人に行った質問票調査データのクリーニングと統合を行った.全国50地裁においてH17年に実施した裁判所記録調査のデータと,上記当事者・弁護士調査データの統合を行った.その上で,種々の分析を行った.その成果は,H19年7月ベルリンのLSAの大会で報告を行うとともに,H20年3月の本特定領域研究の国際シンポジウムで研究成果報告をした.当事者の訴訟提起当時の期待としては,白黒をつける,権利を守る,相手に非を認めさせる等のものが多く,相手方との対話や相手方との関係修復等の期待は乏しいことが明らかとなっている.和解事案に比して判決事案の方が訴訟当事者の満足度,正当であるとの評価,有利な結果であるとの評価などが優っているという結果,反面判決事案に比して和解事案の方が理効率が高いという結果など,興味深い成果が得られている.裁判官や弁護士についての当事者のジェンダー選好を見ると,予想以上に中立的で,必ずしも男性弁護士,男性裁判官を選考するということはないこと,しかし,若干のジェンダーバイアスが見られる等の結果が得られた.この点をインデプスに調査するインタネット調査の結果では離婚や子の監護等の場合と,通常の民事事件とで若干の差がみられることも判明している.同様の事案が将来起きたら再び民事訴訟を利用するかという意味での満足度に対しては,白黒をつける,勝つ,相手を制裁する等の期待が大きい者ほど満足しており,反面,手続きで裁判官が見下してきた,相手との関係修復を図る,等は満足度を下げる要因であることなど興味深い知見が次々と明らかとなっている.これらの知見はさらに詳細な分析を施して平成20年5月の法社会学会とモントリオールのLSAの大会,7月のイタリアでRCSLの大会等で公表し,書物として刊行する.一部はすでにワーキングペーパーとして発表している.
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