Research Abstract |
従前の研究調査で収集した諸データ(民事訴訟当事者調査, 訴訟代理人調査, 一般人調査, インタネット調査など)のデータ・クリーニング, 分析, 研究成果公表を精力的に進めた. 成果として,民事訴訟利用者の特徴の解明,利用者と一般人の間の司法アクセス・弁護士アクセスの相違点の解明, 訴訟追行上の弁護士と依頼者の間の戦略的意思決定と相互作用の実態, 和解か判決かの決定に影響を与える諸要素の解明, 裁判官の訴訟追行上の行動とそれに対する弁護士および訴訟当事者の評価(例 : 和解を押し付けているか, 話をよく聞いているか, など), 弁護士についての当事者の評価,相手方弁護士についての弁護士による評価, 訴訟の結果に対する弁護士の評価と利用者の評価の異同, など, 民事訴訟手続きの改正, 裁判制度の改正, 弁護士制度の改正などの法政策的な論点に対して大きな示唆を与える知見を多数得ることができた. また訴訟利用者と一般国民の間の認識と評価の差異も解明することができた. 以上により, 民事訴訟経験者が民事訴訟提起に到る経緯とその際の考慮要素の解明(裁判への道調査)および, 民事裁判過程における原告, 被告, 原告代理人, 被告代理人, 当事者の関係者(家族や利害関係人など), および裁判官の間の相互作用と訴訟追行上の意思決定を解明する(訴訟追行調査)という初期の目的を十全に果たすことができたと考える. この調査により, 日本国民の民事司法への物理的, 経済的, 主観的なアクセスの阻害要因を解明することができたとともに, 和解や判決に至る訴訟過程における訴訟関係者の相互作用をも明らかにすることができた. 今後の司法政策・法政策に対する重要な貢献をすることができたと考える.
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