2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞培養により作製したハイブリッド人工血管の組織構造に及ぼす流体力学的因子の影響
Project/Area Number |
15086201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
狩野 猛 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30241384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹羽 光一 東京農業大学, 生物産業学部, 助教授 (20301012)
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Keywords | ハイブリッド人工血管 / 内膜肥厚 / 動脈硬化 / 渦流れ / せん断応力 / 内皮細胞 / 単核細胞 / 体外循環 |
Research Abstract |
【1】ハイブリッド人工血管の構成細胞の増殖・衰退に及ぼす渦流れの影響 動脈硬化や内膜肥厚が、なぜ流れの遅いところに局所的に起こるのかを解明するために、ウシ大動脈の内皮細胞および平滑筋細胞を共培養して作製したハイブリッド人工血管を用いて内径が0.92mmから3.00mm急激に拡大するような流路を作成し、これを体外循環培養システムに装着して渦流れのある条件下で7日間培養してハイブリッド人工血管の構成細胞の増殖・衰退に及ぼす渦流れの影響について検討を行った。その結果、細胞層の厚さは、流れが遅い(壁せん断応力が小さい)拡大管の基始部の淀み点および環状渦の最先端に当たる剥離した流れの再付着点で厚く、流れが最も速くなっている(壁せん断応力が大きい)渦の中心部近傍で最も薄くなっていることがわかった。 【2】ハイブリッド人工血管への単核細胞の付着に及ぼす流れの局所的な乱れの影響 上述のハイブリッド人工血管を用いた拡大流路を体外循環培養システムに装着し、渦流れのある条件下で7日間培養した後にヒト単核細胞(THP-1細胞)およびLDL(低密度リポ蛋白)のモデルとしての蛍光ポリスチレン微粒子を加えて循環灌流することにより内皮細胞へのTHP-1細胞およびポリスチレン微粒子の付着、および細胞層へのTHP-1細胞の浸潤に及ぼす渦流れ(disturbed flow)の影響について検討した。その結果、細胞層へのヒト単核細胞(THP-1細胞)およびポリスチレン微粒子の付着および浸潤は、流れが最も遅い(壁せんだん応力の値がO dyne/cm^2)拡大管基始部の淀み点および渦の最先端にあたる再付着点で最も多く、流れが最も速い渦の中心部近傍で最も少ないことがわかった。 これらの結果は、いずれも、動脈硬化や内膜肥厚が、流れが遅く、壁せん断応力が小さい領域に起こりやすいという臨床学的データと一致するものである。
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