Research Abstract |
スピン・電荷ゆらぎ相関系:今年度新たに[Co(3,6-tBut-BQ)2(bpy)]の固体中での原子価互変異性現象におけるSQ(スピンS=1/2,電荷C=-1)とCat(S=0,C=-2)間のスピンゆらぎを調べた結果,[Co(3,5-tBut-BQ)2(bpy)]とは異なり,3〜4個の分子がクラスターを形成してスピンゆらぎが起こるという共同効果を見出した。また,今年度導入した冷凍機を用いて10Kまでの誘電率測定を行った結果,SQとCatの状態交換(スピンと電荷の交換)は,10Kまで温度を下げても,1MHz以上の速さで起こっていることが解った。 磁性金属酵素類似錯体における不対電子軌道の空間分布:電子伝達タンパク質の一種であるアズリン活性中心もモデル錯体とその前駆錯体について,Cu(II)イオンからS原子とN原子を含む配位子への不対電子軌道の広がりを^<13>C,^2H-MAS NMRに基づく超微細結合定数から決定し,半占有軌道の広がり方の特徴を決定した。 ナノ微粒子の表面スピン状態と表面被覆分子の運動性:反強磁性体ND_4MnF_3をPVPポリマーで被覆した20nmと200nmのナノ微粒子を新たに合成し,交流磁化率などを測定した結果,特に20nmのナノ粒子の表面スピンが作る残留磁化の緩和現象を見出した。ポリマー被覆しない同程度の大きさのナノ粒子とは異なる緩和現象であることを見出した。 領域内の共同研究として(木村)、SH基を含む有機酸分子と水分子で被覆された2nmの金ナノ粒子について,^<13>C,^2H,^1H-MAS NMRにより被覆分子の吸着状態と運動性を調べた結果,室温でも極めた動きにくい水分子があることが解った。また,熱重量分析の結果,昇温して水分子が脱着すると表面構造が再配列を起こし,吸熱過程と発熱過程が拮抗していることがわかった。
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