2006 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカの食料増産と劣化環境修復のための集水域生態工学
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15101002
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
若月 利之 近畿大学, 農学部, 教授 (50127156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奧村 博司 近畿大学, 農学部, 助教授 (70152436)
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Keywords | アフリカ型緑の革命 / エコテクノロジー / 持続的水田開発 / ネリカ / 水田仮説 / ガーナ:ナイジェリア / 集水域生態工学 / 研究と普及の間の死の谷 / 第一回アフリカ稲作会議 |
Research Abstract |
サブサハラのアフリカ農業で、待望久しい緑の革命の実現にNERICA米が注目されている。しかしNERICAは40年前のアジアと同じ成功戦略を踏襲しており、育種(バイオテクノロジー)が緑の革命の中心技術であるという仮定に立っている。2006年8月ダラエスサラームでの第一回アフリカ稲作会議で、本研究代表者は「アフリカ型の緑の革命の中心技術は品種改良ではなくて、生態環境の改良(エコテクノロジー)である」との招待講演を行い、かなりの理解を得ることができた。ガーナとナイジェリアのベンチマーク集水域におけるこれまでの長期のアクションリサーチにより、数ha-数10ha規模の水田開発は、生態環境からみても社会経済的視点から見ても持続可能であることは実証した。研究と普及の間の死の谷を乗り越え、西アフリカにおける低地水田開発を促進するためは以下の諸点が重要である。(1)アフリカ集水域の土壌生成速度や養分供給速度は日本やアジアに比べて5から10分の1程度であるため、数億ヘクタールと推定されるアフリカの低地の10%弱、約2000万haが水田適地であるが、適地を見極め線引きが必要である。(2)適地においてアフリカ適応型の水田開発手法をマニュアル化する。(3)土地所有や利用権が重層的で多様な共有型であり、個々の農民の圃場基盤を改良するためのインセンテブが乏しいので、水田の集約的持続性を広範にデモンストレーションし、新しい土地管理・所有システムを可能にし、水田開発のモチベーションを高めることが重要である。ベンチマーク集水域の篤農グループではすでに水田開発を契機とした低地の新しい所有権の移転と確定(登記)が始っている。一方、以上の実践的課題をバックアップするために、(4)サブサハラアフリカでは緑の革命の3要素技術を受け入れる前提条件が欠けている事(アフリカの緑の革命に関する水田仮説(I))の確証が必要である。又、(4)アフリカ集水域の貧栄養の土壌と不十分な水循環量を克服するため、集約的持続性に関する水田仮説(II)に基づく「地質学的施肥プロセス」の強化技術の開発も必要である。
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Research Products
(13 results)