2003 Fiscal Year Annual Research Report
最高速AFMが解き明かす生物分子モーターのナノ構造ダイナミクス
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15101005
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安藤 敏夫 金沢大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (50184320)
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / AFM / 高速AFM / リアルタイムイメージング / ナノバイオロジー / モータータンパク質 / 走査型プローブ顕微鏡 / ナノ動態 |
Research Abstract |
高速AFM装置の改良と並行して、その有効性の実証、及び、問題点の発見のためにいくつかのモータータンパク質系の高速撮影の実験を行った。 1)高速AFMの改良 (a)探針・試料間にかかる力の軽減化:新しいフィードバック制御方式の開発とともに従来よりも柔らかいカンチレバー(共振周波数は以前よりも若干高い)の開発により、探針が試料を叩く力を大幅に軽減化することに成功した。 (b)スキャナーの応答速度の向上:ZスキャナーのQ値を小さくすることで応答速度を10倍以上高めることに成功した。これは電気回路方式のダンピングコントローラーの開発による。Zスキャナーの変位を直接モニターする代わりに、Zスキャナーの共振特性と同じ特性をもつ電気回路の出力をモニターする斬新な方法であり、特許を出願した。Xスキャナーの走査でZ方向に共振する問題も同様な方法により解決することを現在進めている。 (c)センサー感度の向上とノイズの低減化:光テコ光学系のレーザ光をコリメートするレンズを単レンズから複合レンズに変更することでレーザのスポットサイズを従来よりも小さくすることができた。その結果反射光量が増大し、センサーアンプのノイズの軽減化と感度向上に成功した。カンチレバー直前の対物レンズの変更により、一層の改善を現在進めている。 (d)センサーの応答速度の向上:カンチレバー探針と試料との接触によるカンチレバー振動の信号は高周波成分を含む。従来のセンサーの応答ではこの高周波成分を十分検出しておらず、探針・試料間の力の軽減化に限界がある。そこで、センサーの応答速度を高めるべく、Siフォトダイオードに代わるセンサーの試験を開始した。 2)モータータンパク質のナノ動態撮影 (a)ダイニンC:ATPase反応にカップルしたダイニンCの構造形態変化をリアルタイムに撮影することに成功した。 (b)ミオシンVが高密度でコートされた基板上をアクチンフィラメントが滑走する様子を撮影することに成功した。これは探針・試料間にかかる力の軽減化の成功に負っている。 (c)ミオシンVの濃度を下げて個々のミオシンV分子が識別できるようにして、ミオシンVとアクチンフィラメントがATP存在下で相互作用する様子を撮影した。ミオシンVの片方の頭部だけがアクチンと相互作用するだけで頭部の移動運動が観察された。観察例を増やして、運動メカニズムの解明に近づける公算が大きい。
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[Publications] T.Ando, N.Kodera, Y.Naito, T.Kinoshita, K.Furuta, YY.Toyoshima: "A High-speed Atomic Force Microscope for Studying Biological Macromolecules in Action"ChemPhyschem. 4. 1196-1202 (2003)
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[Publications] R.Ishikawa, T.Sakamoto, T.Ando, S.Higashi-Fujime, K.Kohama: "Polarized Actin Bundles Formed by Human Fascin-1 : Their Sliding and Disassembly on Myosin II and myosin V in vitro"J.Neurochem.. 87. 676-685 (2003)
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[Publications] 安藤敏夫: "高速原子間力顕微鏡-生体分子のナノダイナミクス撮影"応用物理. 72(10). 1304-1308 (2003)
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[Publications] 安藤敏夫: "モータータンパク質の運動が高速AFMで見えた!"化学. 59(1). 28-29 (2004)
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[Publications] 安藤敏夫, 古寺哲幸: "生体分子のナノ動態撮影-リアルタイムAFM-"バイオインダストリー. (印刷中). (2004)
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[Publications] 安藤敏夫: "生体分子の高速ダイナミクス撮影 4章4節(P.395-406)in「ナノバイオロジーの最前線」"シーエムシー出版. 439 (2003)