2004 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の再生産機構に及ぼす地球温暖化の影響に関する生理・生態学的研究
Project/Area Number |
15201003
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 精一 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (40106753)
山下 倫明 水産総合研究センター, 中央水産研究所, 室長(研究職)
大竹 二雄 東京大学, 海洋研究所・国際沿岸海洋研究センター, 教授 (20160525)
PARHAR I.S. 日本医科大学, 生理学第一講座, 講師 (10271339)
中村 將 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10101734)
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Keywords | 地球温暖化 / 性分化 / 性特異的マーカー / 再生産 / 魚類 / 生殖細胞 / 耳石 / 温度履歴 |
Research Abstract |
本研究の目的は、地球温暖化がもたらす魚類の再生産機構への影響を解明し、また、その影響のモニタリング技術を開発することである。本年度では、まず、魚類の性分化機構に及ぼす高水温の影響について、これまで研究の主なモデルで、温度依存型性決定機構を有するペヘレイとの比較をするために、より性の遺伝的支配が強い日本産メダカ(Oryzias latipes) d-rR系品種近交系の性分化過程に及ぼす水温の影響を調査した。その結果、d-rRメダカは孵化する前に生殖腺の性が決定することが判明し、この時期の水温は30℃以上の場合はメダカの遺伝的雌は表現型雄として性分化することが分かった。さらに、性決定時における低水温・高水温と外部投与されたエストロゲンホルモンとの間にそれぞれ相乗作用・拮抗作用が認められ、発生初期の生殖腺の発達に対する環境温度と近年問題とされている内分泌撹乱物質の間に共通の作用機序が存在することが示唆された。一方、生殖腺のステロイドホルモン産生機構とそれに及ぼす環境要因の影響を解明するために、免疫組織学的手法を用いて魚類卵巣におけるステロイドホルモン代謝酵素の発現時期と部位を同定した。魚類の再生産機構に及ぼす高水温の影響のモニタリング技術開発については、昨年の結果を基に、霞ヶ浦で捕獲した1994〜2001年生まれのペヘレイ当歳魚を用いて耳石のSr含有量を測定し、天然個体の性分化時における体験水温の推定を行った。その結果、性分化時に低水温と高水温を経験したと推定されるものではそれぞれ雌と雄が多く、耳石の微量元素分析は天然水域における温度依存型性決定機構の発現や雌雄比に及ぼす高水温の影響を解析する上で有効であることが示された。さらに、性特異的マーカーについて、昨年で開発したペヘレイ用AFLPマーカーを起点に、解析家系において遺伝的な雌雄を判別できるSNPマーカーを開発することに成功した。
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