2005 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の再生産機構に及ぼす地球温暖化の影響に関する生理・生態学的研究
Project/Area Number |
15201003
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
STRUSSMANN C.A 東京海洋大学, 海洋科学部, 助教授 (10231052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 精一 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (40106753)
山下 倫明 水産総合研究センター, 中央水産研究所, 室長(研究職)
大竹 二雄 東京大学, 海洋研究所・国際沿岸海洋研究センター, 教授 (20160525)
PARHAR I.S. 日本医科大学, 生理学第一講座, 講師 (10271339)
中村 將 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10101734)
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Keywords | 地球温暖化 / 性分化 / アロマターゼ / 再生産 / 魚類 / 生殖細胞 / アポトーシス / 生殖腺刺激ホルモン |
Research Abstract |
本研究の目的は、地球温暖化がもたらす魚類の再生産機構への影響を解明し、また、その影響のモニタリング技術を開発することである。本年度では、まず、魚類の性分化機構に及ぼす高水温の影響について、生殖腺の分化とアポトーシス(プログラム細胞死)との関連を調べた。本実験では、ペヘレイを孵化直後から全雌作出温度である17℃、全雄作出温度である29℃、雌雄が混在する25℃の各設定水温の水槽で飼育した。仔稚魚は孵化後1週目から10週目までサンプリングし、組織切片を作成後、アポトーシス細胞を検出するTUNEL(Terminal Deoxynucleotidyl Transferase)染色によってアポトーシス細胞を検出した。さらに、17℃区および25℃区において雌性ステロイドホルモンの合成を阻害する試薬(ファドロゾール)を仔稚魚に投与し、同法によってアポトーシス細胞を検出した。TUNEL染色の結果、17℃区の生殖腺では1週目から10週目まで、左右ともに標識された細胞はほとんどなかった。一方、25℃区では約半数の個体で、29℃区で全個体において5週目以降に右側生殖腺のみに顕著な反応が見られ、左側生殖腺はほとんど反応がなかった。アポトーシスを起した細胞を持つ個体の出現頻度は雄の出現率に比例し、25℃区では本来卵巣が分化し始める前からアポトーシスが確認された。なお、ファドロゾール投与区ではいずれの温度でもアポトーシスが誘導された。これら一連の結果により、ペヘレイの温度依存型性決定機構にはアポトーシスが関連していること、右側の生殖腺に卵巣の分化に欠かせない部位が存在すること、さらに、その部位にアポトーシスが起こることによって精巣に分化することが示唆された。一方、生殖機能を促す脳・脳下垂体の主なホルモンの発生過程、水温と性分化との関連を解析するために、ペヘレイの脳型アロマターゼ遺伝子、さらに生殖腺刺激ホルモンFSHおよびLHの受け皿である受容体(FSH-R、LH-R)遺伝子のクローニングおよび構造解析を行った。また、アロマターゼ遺伝子については判定量PCR方法によって発現分布を調べた。
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