2006 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の再生産機構に及ぼす地球温暖化の影響に関する生理・生態学的研究
Project/Area Number |
15201003
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
STRUSSMANN C.A 東京海洋大学, 海洋科学部, 助教授 (10231052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 精一 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (40106753)
山下 倫明 水産総合研究センター, 中央水産研究所, 室長(研究職)
大竹 二雄 東京大学, 海洋研究所・国際沿岸海洋研究センター, 教授 (20160525)
PARHAR I.S. 日本医科大学, 生理学第一講座, 講師 (10271339)
中村 將 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10101734)
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Keywords | 地球温暖化 / 性分化 / 耳石 / 再生産 / 魚類 / 性決定 / 温度履歴 / 生殖腺刺激ホルモン |
Research Abstract |
本研究の目的は、地球温暖化がもたらす魚類の再生産機構への影響を解明し、また、その影響のモニタリング技術を開発することである。本年度では、まず、メダカの性分化機構における温度感受性を精査したところ、受精直後(発生段階5-6)と6日目(発生段階36)の間にメダカの生殖腺の性が決定することが判明した。また、その時期の水温は27℃以上で高い程、雄へ性転換する遺伝的雌の割合が上昇し、34℃において全ての遺伝的雌個体は雄になる。さらに、本種の重要な性関連遺伝子の発現に及ぼす温度の影響を調べた結果、常温(25℃前後)において雄特異的にしかも孵化後にしか発現が起きないとされていたDMRT1遺伝子は発生段階36(孵化4日前)の遺伝的雌においても発現がみられた。これらの結果から、雄において精巣の分化を促すとされているDMY遺伝子発現と同じ役割は、遺伝的雌において高温が果しうることを見せ付けた。一方、ペヘレイの温度依存型性決定機構における視床下部・下垂体の関与を解明するために、本種の性分化時期における生殖腺刺激ホルモン(FSH・LH)のβサブユニット遺伝子とその受容体(FSHr・LHr)遺伝子の発現動態を解析した。その結果、全雄を作出できる29℃ではFSHβ・LHβ遺伝子ともに発現量が多く、性分化前に顕著な発現量のピークが認められた。全雌となる17℃区では性分化前にFSHβのみ発現量がピークを示したが、他の温度区に比べてFSBβ・LHβ遺伝子ともに発現量は低く、性決定の時期にこの条件が雌への性分化を引き起こしている可能性が示唆された。なお、FSH・LH受容体の発現量に関してはそのホルモン発現量と温度に依存した相関関係がみられた。モニタリング技術開発については、耳石の微量元素分析による個体レベルの温度履歴推定をメダカで試みた。その結果、これまでに調べたペヘレイと同様に、メダカの耳石においてもストロンチウム含有量と温度の間に正の相関の傾向が認められ、本元素をベースにメダカの天然個体の温度履歴推定を行える可能性が示唆された。本プロジェクトの他の研究課題についてもほぼ予定通り研究を行い、豊富な新知見を見出した。
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Research Products
(11 results)