2005 Fiscal Year Annual Research Report
構造調整に見る東アジア経済法基盤の転換--日韓経済立法の比較制度研究を素材にして
Project/Area Number |
15203002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稗貫 俊文 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70113610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 誠 千葉大学, 大学院・専門法務研究科, 教授 (20334162)
中山 武憲 名古屋経済大学, 法学部, 教授 (40278388)
瀬領 真悟 同志社大学, 法学部, 教授 (90192624)
向田 直範 北海学園大学, 法学部, 教授 (90104695)
和田 健夫 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20133796)
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Keywords | WTOのTRIPs協定 / 競争原理と開発原理 / パテントミスユース / 強制ライセンス / 最貧国(LDC) / HIV / オープンアクセス問題 / 集権的な再分配 |
Research Abstract |
今年度は、(1)8月に「知的財産権と競争法」の課題を福岡で、(2)10月に「電気通信産業の課題」を札幌で、(3)3月に台湾の台北で、「日本の官製談合の規制の課題」を議論した。 (1)福岡では知的財産制度の基本構造には異論はなかったが、国や発展段階により、様々な弊害が不可避に生まれることから課題が示された。台湾の范建得教授は、東アジアで知的財産権のもたらす弊害に対する是正措置として、パテントミスユース、競争法、強制ライセンスを示した。栗田誠教授は知的財産権濫用に対する競争法の規制は、開発原理の規制と競争原理の規制があり、その差違の意義を認めて、国と地域ごとに使い分けることの重要性を示した。山根裕子教授は、最貧国(LDC)では、40万の人がHIVで死んでおり、特許医薬品の取引価格に意味がなく市場が成立しないとした。競争原理も開発原理の働く余地はなく、ただ生存原理が働いているとした。結論としてそれぞれの国と地域の文化・伝統や経済の発展段階に応じた知的財産制度の基本構造の具体化において差異が認められるべきということが確認され、WTOのTRIPs協定の失敗が唱えられた。 (2)ソウル大学・権五乗教授と甲南大学・土佐和生教授が、日韓の電気通信産業における競争政策の制度比較の問題を論じた。日本も韓国もネットワークに対するオープンアクセス問題が議論の中心になった。 (3)稗貫俊文教授は、日本では産業政策型と社会政策型の二つのカルテルがあり、今では前者が消滅して、後者が依然として根強く残っているとした。そして、その背景に、後発近代国家の日本がアジアで最初に集権的な再分配をした残滓であるとし、それには相応に意味があったが、業界と官界と政界の癒着によりそれが腐敗して、持続可能性を失ったとした。そして、東アジアを展望する新たな所得の再分配の方法が求められるとした。
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Research Products
(43 results)