2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15203008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 隆敏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (30203144)
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Keywords | 為替介入 / 円・ドルレート / マイクロ・ストラクチャー / 介入の反応関数 / 為替介入による利益 / 危機の伝播 |
Research Abstract |
為替レートの変動分析について、つぎの3種類の研究実績があがった。(1)円・ドルレートの日次の変動に与える外国為替介入の影響についての分析、(2)円・ドルレートの一時間ごと(マイクロ・ストラクチャー)変動分析、(3)アジア通貨の変動の連関性(危機の伝播)の分析、である。(1)1991-2002年の日米通貨当局による為替介入の効果について回帰分析したところ、介入が円・ドルレートに与える影響をみると、介入が、頻度は低いものの一回あたりの介入が大規模であった1995年6月以降のほうが、頻度が高く小規模におこなわれていたそれ以前の時期よりも、効果的であったことがわかった。また、米通貨当局の介入は、日本の通貨当局の介入よりも、20-50倍(時期により異なる)効果的であったことがわかった。さらに、一週間以上間を置いて行われた介入のほうが、効果的であることもわかった。介入がどのような状況で行われやすいか、ということをみるために、介入の反応関数を分析したところ、直近の為替レートの動きが大きい場合、長期の移動平均からの乖離が大きい場合に、介入が行われやすいことがわかった。介入により、通貨当局は外貨の売買、保有を行う。この外貨の売買や保有による、介入の利益を計算することが出来る。10年間の間の、売買実現益と利子率差による累積利益、さらに2002年3月末の外貨準備の未実現評価益を合計すると約10兆円の利益があったことが判った。(2)マーケット・マイクロ・ストラクチャーの分析では、1日24時間の通貨取引のパターンを分析した。取引回数、売買値付け(ビッド・アスク)の変更回数などで測ったマーケット活動は、ある規則性をもっていることがあきらかにされた。東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場のそれぞれにおいて開始時間のマーケット活動がとくに活発であることがわかった。また、三大市場のそれぞれにおいて、マーケットの終了時間にはとくにマーケット活動が激しくなるわけではない、こともわかった。(3)アジア通貨の変動分析では、直近数日の動きが、ある一定の閾値を超えて、一番大きな減価を示した通貨を危機の根源とみなして、同日のうちに他の通貨が減価する場合に危機の伝播があったとみなして危機の伝播を分析した。貿易関係が大きな国同士で、危機の伝播がおきやすいことがわかった。以上。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Takatoshi Ito: "Is foreign exchange intervention effective? The Japanese Experiences in the 1990s"Paul Mizen (ed.) Monetary History, Exchange Rates and Financial Market,出版社、Edward Elgar. (本に章として所収). 126-159 (2003)
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[Publications] Takatoshi Ito, Tomoyoshi Yabu: "What Prompts Japan to Intervene in the Forex Market? A New Approach to a Reaction Function"研究発表会、ニューヨーク連邦準備銀行にて2004年2月11日. (2004)
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[Publications] Takatoshi Ito, Yuko Hashimoto: "High-Frequency Contagion between the Exchange Rates and Stock Prices during the Asian Currency Crisis"研究発表会、統計研究会、高知コンファレンス、2004年3月14日. (2004)