2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15204028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樽茶 清悟 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (40302799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大岩 顕 東京大学, 大学院工学系研究科, 講師 (10321902)
山本 倫久 東京大学, 大学院工学系研究科, 助手 (00376493)
大野 圭司 独立行政法人理化学研究所, 研究員 (00302802)
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Keywords | 半導体物性 / 量子ドット / スピンエレクトロニクス / メゾスコピック系 |
Research Abstract |
(少数電子系のダイナミクス) 昨年度提案した傾斜磁場と電気的制御によるスピン量子ビットの原理を、具体的なデバイスに展開することを目指した。試行錯誤の試作を重ね、様々な必要条件(微小磁石とドットの合わせ、傾斜磁場効果の確認実験とシミュレーション、必要な振動電圧と量子ビット性能の評価、電子g因子決定など)を決定した。また、同原理を利用して、安定で信頼性の高いスピン読み出し法を提案した。現在本格的なデモ実験を行っている。これらの、現在その試作を進めている。 スピン偏極した量子細線をスピンフィルターとして用いた量子ドットのスピンスペクトロスコピーと、量子ポイントコンタクトを用いた量子ドット中の電荷の読み出し技術とを併用し、電子充填率が2の磁場付近での電子スピン緩和(triplet→singlet)がスピン-軌道相互作用によって起こることを確認した。また、希釈冷凍機内部に設置したコールドグランドおよびコールドアンプを用いて、電荷読み出しの精度を10kHzから200kHz程度まで改善した。 単一自己形成InAs量子ドットの近藤効果を中心とした輸送現象から、多体効果に関する興味深い数々の現象を観測することに成功した。1)InAs量子ドットにおいてスピン1/2の近藤効果を初めて観測した。2)超伝導電極を持つInAsドットでは近藤状態と超伝導状態の競合を観測し、超伝導ギャップと近藤温度の比を唯一のパラメタとして近藤共鳴状態の伝導度が抑制・増強するという近藤効果の新しい普遍性を見出した。3)強磁性体電極を持っInAsドットではゲート電圧によるトンネル磁気抵抗の振動を観測した。 (電子スピン・核スピンの動的結合) スピン量子ビット形成やスピンメモリなどを考える上で核スピン偏極の制御が重要視されている。この問題に集中的に取り組み、電気的磁気的制御により、核スピン偏極を任意に操作することに成功した(最大の核スピン偏極率(50%)を達成)。また、核スピン結合を利用して交換エネルギーの離調依存性を求め、電圧変調に対する安定領域の存在を初めて確認した。2量子ビット制御へ向けて重要な知見である。 従来数秒単位で制御していた電子スピン・核スピン結合のスイッチングをナノ秒以下で高速に行うため、2重ドット素子のバイアス電圧をパルス的に変調し、高速にON・OFFすることに成功した。この時間分解能は0.5ナノ秒以下であり、これはコヒーレントな電子スピン・核スピン結合ダイナミクスに特徴的な時間である1-10ナノ秒より十分に小さい。この高速パルスを繰り返し印加することで、スピンプロケード領域に特徴的な一重項電子対により運ばれる過渡電流を初めて観測した。これはパルス電圧のON・OFF時間が素子のトンネル時間(1-10ナノ秒)程度になる場合に予想される現象で、電子スピン・核スピン相互作用のスイッチング実現への重要なステップである。
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Research Products
(6 results)