2006 Fiscal Year Annual Research Report
p電子系物理学-ボロン・カーボン系の超伝導と磁性-
Project/Area Number |
15204033
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
秋光 純 青山学院大学, 理工学部, 教授 (80013522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浴野 稔一 広島大学, 大学院総合科学研究科, 助教授 (40185103)
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Keywords | 超伝導 / p電子系 / Y_2C_3 / トンネル分光 / STM |
Research Abstract |
p電子系物質の超伝導電子状態を微視的に解明し,高温超伝導発現への指針を得るために,独自のbreak-junctionトンネル分光装置や極低温超高真空走査トンネル顕微鏡/分光装置(STM/STS)を用いて詳細な測定を行った. まず,Y_2C_3で見られる高いY_c〜15Kの原因を調べるために良質の単相試料を作成し超伝導ギャップの測定を行った.この物質は表面劣化が極めて激しく,break-junctionにより初めてトンネル分光測定が可能となった.それによると,電子対の波動関数はs波の対称性を持つが,Δ=1.5meVと2.9meVの2種類の超伝導ギャップが存在する.それらは共に興で消失することからギャップ比は2Δ/K_BT_c=2.2と4.4となる.大きいギャップはBCS的な温度依存性を示すが,小さなギャップは高温領域で誘起超伝導の秩序変数の温度変化と似た振る舞いを示す.これらのことから,Y_2C_3は強結合であり,バンド間相互作用の比較的小さな2ギャップ超伝導体であることが明らかとなった.これは,比熱の磁場依存性やNMRの測定結果と一致する. TM/STSに関してはMgB_2やCaAlSiの表面原子像および局所電子状態の測定を行なっているが,さらに詳細に調べるために,これらと平行して表面観測にとって重要なパラメータである仕事関数の空間分布の測定を開始している.基準物質として測定した高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+y>についての結果を整理すると,この物質の仕事関数は,原子格子点の直上で大きい,BiO面変調構造の欠損部分で低く中腹部で高い,超伝導ギャップ分布との相関は弱い,ことなどが明らかとなった.これらは通常のトンネル分光とは相補的な物理量に関する新たな情報を与えている.
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Research Products
(11 results)