Research Abstract |
海洋の化学組成をコントロールする流入フラックスは,おもに大陸地殻からの河川および風成塵,海嶺からの熱水,宇宙塵などであり,これらの相対的強度の時間変化は,グローバルな表層環境の変動を支配する要因の一つと考えられる.Os同位体は,海域による違いがなく全海洋についてほぼ均一な値を示すこと,また同位体の変動幅が極めて大きいこと(例えば海水のOs同位体は熱水の同位体比の5倍以上)など,地球化学トレーサーとして非常に優れている.ウッズホール海洋研究所のRavizzaらは,主にODP/DSDPのコア誠料中のFe-Mn堆積物から,70Ma以降のOs同位体の変動曲線を得ている.本研究申請者らは,顕生代のOs同位体変動を日本列島付加体中の熱水性Fe-Mn堆積物から解明することを目的として,本研究に着手した.日本列島の付加体は,世界でも類を見ないほど高時間解像度で解析された顕生代の地質体なので,そこからは本研究を遂行するための最適の地質試料を得ることができる.その結果,350Ma以降のOs同位体の経年変動曲線を得ることに成功した. 最初の研究成果として,四万十帯北帯の熱水性Fe-Mn堆積物(白亜紀/第三紀境界直前の堆積物)のOs同位体について,極めて重要な国際誌のひとつであるGeochemistry Geophysics Geosystems誌(2004インパクトファクター=2.864)に発表した.また日本列島の顕生代付加体中に分布する熱水性Fe-Mn堆積物の地質学的,地球化学的特徴を総括する論文集を国際学術雑誌のResource Geology(2004インパクトファクター=0.515)から刊行し(A Special Issue : Seafloor Processes and Mineralization in Panthalassa),それに4つの論文を発表した.現在さらに2つの論文をGeochimica et Cosmochimica Acta, Earth and Planetary Science Letters誌に投稿する準備を進めている.
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