2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15205010
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中沢 浩 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00172297)
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Keywords | C-C結合切断 / シリル配位子 / 触媒反応 / 酸化的付加反応 |
Research Abstract |
近年申請者は、シリル基を配位子とする鉄錯体が、アセトニトリルの炭素-炭素結合を切断することを見いだした。この反応は、通常起こらないアセトニトリルの炭素-炭素結合を切断するという意味で注目に値するが、化学量論反応であった。今年度はこの反応を触媒的に進行する系の検討を行った。 触媒量の鉄錯体共存下、ヒドロシラン(Et_3SiH)とアセトニトリルを当モルTHF溶液に入れて光照射を行なうと、アセトニトリルの炭素-炭素結合切断とSi-C結合生成が起こり、シリルシアニド(Et_3SiCN)が生成することが分かった。Et_3SiHに対して2mol%のCp(CO)_2Fe(SiEt_3)用いた場合、TONは23であり、2mol%のCp(CO)_2FeMeを触媒とした場合にはTONは36となることが分かった。反応試剤の比を変えて、アセトニトリルをヒドロシランに比べて過剰量(10倍モル当量)使用すると、触媒効率が飛躍的に向上し、TONは156に達することが明らかとなった。 触媒サイクルの機構についての考察も行なった。光照射によりCp(CO)_2FeMeからCOが1つ脱離し、そこにEt_3SiHのSi-H結合が酸化的付加する。その後メタンの脱離、アセトニトリルのπ配位、シリル基の鉄からニトリル窒素への転位、そしてC-C結合の切断が起こって、Cp(CO)Fe(Me)(CNSiEt_3)が生成する。このサイクルの途中で生成するCp(CO)Fe(SiEt_3)にアセトニトリルが配位すると触媒サイクルは回るが、系中に過剰に存在するEt_3SiHが反応するとCp(CO)Fe(SiEt_3)_2(H)が生成し、触媒サイクルからはずれる。アセトニトリルをヒドロシランに対して過剰に用いると、この副反応が抑えられ、そのため触媒効率が向上したものと考えられる。
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