Research Abstract |
本研究は,概念的に新しいアセチレン類の環化反応の開拓により優れたπ共役化合物群を創出し,これをもとに材料科学の新たな局面を切り拓くことを目的とする.この化学では,いかに重要な骨格を,いかに効率的に,かつ,一般性をもって創りあげるかが鍵となる.本研究では,そのような骨格としてラダー型オリゴ(フェニレンビニレン)に着目し,その骨格形成反応として,ジフェニルアセチレン類の分子内還元的環化反応の開拓について検討を進めてきた.また,新たな標的分子としてヘテロアセン類を挙げ,その合成のための新反応探索についても検討を行った.本年度の成果は次の二つに纏められる. 1.ケイ素・炭素架橋オリゴ(p-フェニレンビニレン)の一般的合成法 前年度までに開発したジフェニルアセチレン類の分子内還元的環化反応によるシラインデン類の合成法をさらに発展させ,この分子内還元的環化反応とFriedel-Crafts型環化反応とを組み合わせることにより,ケイ素・炭素架橋オリゴ(p-フェニレンビニレン)の一般的合成法を確立した.この方法論により,最も長いもので,環が13個縮環した誘導体まで合成した.得られたラダーπ電子系は,何れも高い共平面性骨格をもち,また,可視領域に強い蛍光を示した.蛍光特性,蛍光寿命測定をもとに励起状態に及ぼすケイ素の効果について検討し,ケイ素部位とπ共役部位とのσ*-π*共役が励起状態のダイナミクスにも大きな影響を与えることを明らかにした. 2.ヘテロアセン類の一般的合成法 典型元素架橋スチルベン骨格をさらに5員環縮環構造で拡張した含16族元素ヘテロアセン類を新たな標的化合物として挙げ,その合成法を検討した.ビス(ο-ハロアリール)ジアセチレンを出発原料に用いた分子内三重環化反応により,ジカルコゲニイン骨格を含む縮環多環式π電子系が得られることを見いだした.この手法と,銅を用いた脱カルコゲン反応とを組み合わせることにより,一連のヘテロアセン類の合成を達成した.得られたπ電子系は何れも高い共平面性骨格を有していた.
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