Research Abstract |
1)波により表層に亀裂が発生する場合には,底泥内部で明瞭な含水比の低下が現れる現象を確認した.さらに,亀裂が水みちとなってドレーン効果を発揮するとして解析すると,含水比の変化特性が再現できることを示した.底泥表層に発生する亀裂は,巻き上げに起因する地形変化特性のみならず,圧密変形特性に影響を与え得る要因であることが始めて実験により明らかになった. 2)浚渫泥を用いて,波浪作用による亀裂の発生およびそのドレーン効果を実験的に検証するとともに,圧密特性を明らかにした.実験では,波浪作用の開始後,直ちに底泥運動が現れるとともに,波峰線と平行に亀裂が発生した.波浪作用の3時間後には亀裂の表面部は細かく破砕した状態になり,さらに,24時間後には,粘土が時間とともに強度を回復するチキソトロピー効果により,表面部は一部塊状になり,断層化している状態が確認された.波の周期変動の中で,亀裂に石膏スラリーを流し込み,きれつの深さを確認した.これより,深度方向に長さ5〜10cm,厚さ2mm程度まで亀裂が発生していることを実証した.また,24時間後の含水比分布より,局所的に形成された深い亀裂が水みちとなりドレーン効果が現れていたことわかった.以上の結果から,亀裂により底泥の深部から細粒分が水とともに排出されていることが,底泥の巻き上げの供給源のひとつであることと推測される. 3)大阪湾洪積粘土に代表されるように,年代効果を持つ粘土はセメンテーション構造を有しており,原位置の有効土かぶり圧に対して大きな間隙比で堆積している.このような地盤の堆積過程を検討するため,少量のセメントを混合した粘性土の圧密試験を実施し,セメンテーションと圧密が同時に進行するときの粘土のe-log p関係を実験的に調べた.一連の試験の結果,セメンテーションによる擬似過圧密,間隙比の上昇を実験的に再現することができた.しかし,大阪湾洪積粘土では圧密降伏圧力を超えたときに非常に大きな圧縮性を示して間隙比が急減するが,そのような特性は十分には再現されていない.セメンテーションの経時的な発現過程を表現する式を求め,堆積が同時に起こるときの土被り圧と間隙比の関係を解析するモデルを作成した.計算結果は実験結果および自然地盤の土かぶり圧と間隙比の関係をよく説明した. 4)自然堆積環境下では波や流れなど水が動いている環境で地盤が形成されている.回転流がある場において粘土の沈降・圧密試験を行い,流速の違いによる沈降・圧密特性を調べた.流速が速い場合には粘土粒子の巻き上げと安定(圧密)が繰り返され,地盤高さが階段状に変化する現象がみられた.巻き上げ量が多い場合,巻き上げられず圧密した地盤と,流れを停止した後に沈降・堆積した地盤との二層構造になりの境界付近では巻き上げのない地盤の含水比も上昇することがわかった.
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