2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15207020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
四方 哲也 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (00222399)
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Keywords | 実験室内共生系 / 細胞性粘菌 / 大腸菌 / セルソータ / ジーンチップ / テトラヒメナ / 光合成細菌 |
Research Abstract |
本研究では、実験進化の特徴である再現性を生かして、安定な共生系を複数系列で作り出す。そして、共生系安定化の複数プロセスを解析することによって、偶然の変化を排除し、共生系発達の基本的条件を明らかにする。この知見は、すでに成立している天然の共生系にも、可能な発達ルートを具体的に示唆するので重要である。 具体的には、我々の実験室で見つかった2つの人工共生系を解析する。1つは細胞性粘菌と大腸菌が共存する粘性コロニーである。 もうひとつの共生系は、光合成細菌が鞭毛虫であるテトラヒメナへ細胞内共生する系である。植物の光合成能を司るクロロプラスの起源は光合成細菌が比較的大きな細胞に入り込んだためと言われている。しかし、その再現は未だになされていない。つい最近、我々はテトラヒメナを嫌気条件にしたときのみ、光合成細菌を徐々に細胞内に維持するようになることを見出した。 本年度は細胞性粘菌と大腸菌との共生系に関して、以下のような知見が得られた。貧栄養固体培地上で両菌を共培養すると、コロニーの形態が順次変化し、粘性コロニーへと移行してゆく。その過程における細胞性粘菌と大腸菌の形態や個体数を、セルソータなどを用いて観察した。その結果、両者を単独で培養した場合とは異なる、特徴的な個体群動態が見られた。 次に粘性コロニーを形成している大腸菌と、単独培養の大腸菌とで菌体内の生理状態に差があるかどうか調べるために、両者から全mRNAを取り出し、ジーンチップにより解析した。その結果、解糖系やクエン酸回路などの主要代謝経路の酵素遺伝子に明確な差が認められるものがあったほか、ストレスタンパク質群の中にも顕著な差を示すものがあった。以上の結果は、細胞性粘菌との共生系の発達の初期段階の大腸菌の変化を明らかにしたものである。
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[Publications] Shin-Ichi Matsuyama et al.: "Global change in Escherichia coli gene expression in initial stage of symbiosis with Dictyostelium cells"Biosystems. 73(3). 163-171 (2004)
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[Publications] Hiroki Ueda et al.: "Universality and Flexibility in Gene Expression from Bacteria to Human"Proc Natl Acad Sci USA. 101(11). 3765-3769 (2004)
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[Publications] Sato K., Ito Y., Yomo T., Kaneko K.: "On the Relation between Fluctuation and Response in Biological Systems"Proc Natl Acad Sci USA. 100(24). 14086-14090 (2003)