2006 Fiscal Year Annual Research Report
形態形成と病態の発症に関わるGDNF/RETシグナル伝達系の個体レベルでの解析
Project/Area Number |
15209014
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 雅英 名古屋大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40183446)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市原 正智 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (00314013)
村雲 芳樹 名古屋大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (40324438)
|
Keywords | GDNF / RET / チロシンキナーゼ / プロテインキナーゼA / JNK / 細胞運動 / 腸管神経系 / ノックインマウス |
Research Abstract |
プロテインキナーゼA(PKA)のリン酸化部位であるRETの細胞内ドメインに存在するセリン697をアラニンに置換したノックインマウスを作成した(S697Aマウス)。病理組織学的変化を解析した結果、大腸遠位部における腸管神経系の形成が著しく障害されていることが明らかになった。大腸近位部から小腸にかけては異常は認められなかった。ノックインマウスの腸管神経系の形成過程を解析した結果、胎生期における腸管神経前駆細胞の遊走能が低下しており、そのことが大腸遠位部における腸管神経系の欠損を引き起こしていた。胎児腸管を培養し、腸管神経前駆細胞のGDNFに対する遊走能を検討した結果、予想どおりノックインマウス由来の腸管神経前駆細胞の遊走能は著しく低下していた。一方、ノックインマウス由来の腸管神経前駆細胞の増殖、生存、分化能については、野生型の腸管神経前駆細胞と比較して同等であった。さらにノックインマウス由来後根神経細胞をGDNFで刺激するとJNKのシグナルが特異的に障害されていた。以上の結果より、JNKシグナル伝達系が主に腸管神経前駆細胞の運動能を制御していることが明らかになった。S697Aマウスでは腎臓発生への影響は極めて軽微であり、交感神経節、副交感神経節にも異常は認めなかった。セリン697はPKAによるリン酸化部位であり、神経系細胞におけるRETとPKAの活性を制御するG蛋白共役型レセプターとのクロストークの可能性が示唆された。特に、腸管神経細胞において、RETとともにヒルシュスプルング病の原因遺伝子であることが知られているエンドセリンレセプターBによるPKAの活性の制御が、RETのセリン697のリン酸化レベルをコントロールすることにより、正常な腸管神経系の発生に寄与している可能性が示唆された。
|
Research Products
(10 results)