2006 Fiscal Year Annual Research Report
非侵襲的神経新生誘導技術の開発と実験的損傷脳への応用
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15209048
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
柳本 広二 国立循環器病センター(研究所), 病因部, 室長 (50281689)
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Keywords | 神経新生 / 神経幹細胞 / 脳由来神経栄養因子 |
Research Abstract |
神経細胞の一過性脱分極現象であり、脳内直流電位上では伝搬性波紋として観察される拡延性抑制(SD)は"てんかん"発作誘発性電気的刺激や、膜ポンプ機能の低下を伴う細胞内外脱分極を生じさせる化学的刺激(塩化カリウムの局所注入)で誘発することができる。このSDを繰り返し脳内にて発生させることで、脳室下壁に存在する神経幹細胞を活性化し、さらに、脳の成長発達終了後に神経幹細胞が存在する特定の領域(前頭脳室下壁、嗅神経束、嗅球、海馬)以外、基底核、あるいは、脳皮質といった領域に新たな神経細胞を生じさせることを明らかとした(2005,36,1544-50,Stroke)。このSD後に観られた脳内幹細胞の活性化には主として神経栄養因子の一種であるBDNFの産生増加が寄与していると考えられる。 しかしながら、脳内でのBDNF量が増加し、その結果、神経幹細胞が活性化、そして、新生神経細胞が増加するとしても、塩化カリウムの注入による局所的脳障害を避けることは不可能であり、したがって、この手法を臨床へそのまま応用することは困難であった。本研究では、脳内局所への塩化カリウム持続注入によるSDの発生→細胞膜脱分極→細胞内カルシウムイオンの流入と細胞核内シグナル伝達→脳内BDNFの増産という既存の手法以外によって脳内BDNFを安全に増産させる技術の開発に挑戦した結果、生体に対する特定の高電圧印加刺激が、これまでの塩化カリウムの脳内持続注入と同様に脳内BDNF量を有意に増加させることを発見した(2006年、米国神経科学学会発表、2006年、産経新聞10月16日掲載)。一定の高電位刺激がマウス脳内のBDNFを有意に増加させることを確認し、脳内のBDNFを増加させる新たな生体刺激を開発した(特願中)。同様の生体への高電位刺激は、神経活動に伴って生じる脱分極時のカルシウムの細胞内への流入を増強させる効果のあることはすでに報告されていた。
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