2006 Fiscal Year Annual Research Report
国境を越える移動・エスニシティ・地域社会の再構築に関する比較社会学的研究
Project/Area Number |
15252011
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐々木 衞 神戸大学, 文学部, 教授 (60136398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 信彦 神戸大学, 文学部, 教授 (20086052)
油井 清光 神戸大学, 文学部, 教授 (10200859)
藤井 勝 神戸大学, 文学部, 教授 (20165343)
白鳥 義彦 神戸大学, 文学部, 助教授 (20319213)
高井 康弘 大谷大学, 文学部, 教授 (00216607)
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Keywords | トランスナショナル / クロスボーダー / 移動 / エスニシティ / ナショナリズム / コミュニティ / ネットワーク |
Research Abstract |
1,研究実績の概要 (1)本年度は年4回、研究会を開催して、収集した資料の検討を行った。調査資料の共同研究による4年間の研究成果は、佐々木衛編『越境する移動とコミュニティの再構築』(東方書店、2007年)として論文集を公刊した。 (2)聞き取り調査による調査資料は、資料集・科研報告書『資料集 国境を越える移動・エスニシティ・地域社会の再構築に関する比較社会学的研究』(科研報告書、2007年3月)としてまとめた。 2,研究から得られた知見の概要 (1)東アジアの各国は、外国人労働者の導入が事後承認的に拡大している。外国人労働者が雇用される条件は、社会的な制度や構造の面で制限が大きく、また入国に際してもブローカーの手配に頼らざるを得ない場合が多い。このような労働環境が移住労働者の生活を過酷にする悪条件を生んでいる。 (2)外国人労働者はネットワークを移動先の社会に広げているのみではなく、故郷との緊密な関係を維持し続けている。中国・青島に移住した韓国人のエスニックビジネスが表すように、本国の文化へのアクセスが文化資本に転じる場合、「ホンモノ」の文化を移住先で演出することもある。 (3)移動者たちは、移住先の地域社会から隔離されたコミュニティを構成することが多い。彼らが劣悪な生活と労働の環境におかれるならば、周縁的な位置に閉じ込められている構造を他者との差異化によって地位を反転させたいという願望が強くなる。韓国における中国朝鮮族が「中国」の「朝鮮族」として韓国社会から一線を引こうとするエスニックな感情は、その典型的な姿を表現している。 (4)タイに移住したミャンマー人モーン族が定住志向を高め、またタイ東北部のベトナム移住者が集団としてのアイデンティティを希薄化させている事例も本研究は明らかにした。タイに移動した人々が過酷な条件の下にあっても必ずしも不幸の中に押しつぶされていないことも明らかにされた事実である。移動性を高めた都市は、異種混交性、雑居性、脱中心(権威)的な構造を都市の性格として内在化させおり、移動者が新しい生活チャンスを獲得する空間を出現させている事実も存在している。
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