2004 Fiscal Year Annual Research Report
湿潤熱帯・マメ科早生樹造林地帯における土壌酸性化メカニズムの解明と発現予測
Project/Area Number |
15255014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 誠一 京都大学, 農学研究科, 教授 (10346033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 博清 京都大学, 農学研究科, 教授 (60109048)
神崎 護 京都大学, 農学研究科, 助教授 (70183291)
田中 永晴 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, チーム長 (60353760)
金子 隆之 京都大学, 農学研究科, 助手 (20233877)
石塚 成宏 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (30353577)
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Keywords | 湿潤熱帯 / 土壌酸性化 / マメ科早生樹 / 産業造林 / Acacia mangium / 物質循環 / 養分プール / 森林生態系 |
Research Abstract |
本年度は、インドネシア、スマトラ島のアカシアマンギウム(アカシア)産業植林地と周辺の二次林、荒廃草原を対象フィールドとして以下の研究活動を行った。 1)マメ科樹種の造林に伴う土壊酸性化仮説を検証するため、アカシア林、二次林、荒廃草原を対象に広域多点土調査を行い、土地利用変化過程における土壌変化実態とその要因を解析した。荒廃草原→アカシア植林地への転換に伴う明瞭な土壌酸性化が確認され、交換性塩基類の減少がその主因であることを指摘した。 2)アカシア林2箇所に設けたプロット(重埴土と軽埴土)の毎木調査を行い1年間のバイオマス増加量を推定した。重埴土区のバイオマス量は13.0ton/ha(156.7ton/h→169.7ton/ha)増加したが、7年間の平均増加量(22.4ton/ha)よりも小さく成長の鈍化が示唆された。一方軽埴土プロットのバイオマス増加量は3.5ton/ha(132.8ton/h→136.2ton/ha)と7年間平均増加量(19.0ton/h)よりはるかに小さく、著しく成長が鈍化していた。 3)アカシアの細根の現存量と分布様式を明らかにするため、上記2プロットで、堆積腐植層から深度50cmまで採土コアを用いて多点サンプリングを行い、直径級ごとにソーティングし計量を行っている。1mm以下の微細根は土壌中に一様に分布するのに対し1mm超の根の分布は偏りが大きいこと、細根量バイオマス量は1-3ton/ha程で全バイオマスに占める割合は小さいことを明らかにした。 4)8年生アカシア林に設けた固定試験地において2003年10月よりから林内雨、樹幹流、土壌水の観測を行った。2003年10月-2004年9月の年間降水量は2470mmで、林内雨はその約85%(2100mm占めていた。林内雨の各様存成分濃度(加重平均値mg/L)は、Na,0.91;K,5.69;Ca,0.94;Mg,28;Cl,5.36;NO_3,0.50;SO_4,1.68であった。樹幹流の平均濃度も基本的にこれと同等であったが、硝酸イオンのみは両者で異なり林内雨よりも樹幹流で濃度が低かった。林内雨の年間負荷量(kg/ha)はNa,19;K,120;Ca,20;Mg,6;Cl,113;NO_3,11;SO_4,3.5であった。土壊水は硝酸イオンの濃度が他の成分と比較して高い傾向を示した。 5)アカシア林における土壌動物の物質循環に及ぼす影響を明らかにするため、アカシア林、ゴム林、二次林を対象に土壌動物の群集構造を比較検討した。アカシア林やゴム林土壌には多くのミミズ類が分布しシロアリの個体数も多かったのに対し、天然林的要素を残す二次林土壌では土壊動物の種類組成は多様である一方、個体数、特にミミズの個体数が少なかった。アカシア林やゴム林など人工林化に伴う落葉、細根生産、根からの可溶性有機物の供給増加に対応し、土壌性のミミズ類の密度が上昇すると考えられ、人工林システムではミミズ類が物質循環、特に窒素の無機化に大きく寄与している可能性を指摘した。
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Research Products
(4 results)