2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15255015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 直紀 京都大学, 農学研究科, 助教授 (40335302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野渕 正 京都大学, 農学研究科, 教授 (50026499)
藤田 稔 京都大学, 農学研究科, 教授 (60026599)
北山 兼弘 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (20324684)
安部 久 国際農林水産業研究センター, 林業部, 主任研究官 (80343812)
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Keywords | タイ熱帯季節林 / フタバガキ科 / 水ポテンシャル / 道管径 / キナバル山 / 熱帯山地林 / 栄養塩 / 最大樹高 |
Research Abstract |
タイ南部のTrangと東北部のSakaeratにおいて,フタバガキ科の水ポテンシャルの季節変化を測定するとともに,7月(雨季)と3月(乾季)において原形質分離時における浸透ポテンシャルを測定した.また,樹高方向に4〜5mの間隔で胸高部位から3,4点の木部試料を採取し,道管径と分布数の垂直的な変化を調べた.葉の水ポテンシャルは土壌の水分状態に応じた季節変化をしめし,乾季の後半では-2〜-3Mpaというきわめて小さい値をとった.原形質分離時の浸透ポテンシャルの値は温帯の広葉樹に較べて低く,浸透圧を高くすることによって乾季の乾燥に対する耐性を獲得していることが示唆された.樹幹の上下で道管の内径と分布数に一定の傾向は見られなかった. タイに生育するフタバガキ科樹種Hopea odorataの胸高部から採取した木部試料を用いて,木理の計測を行った.同樹種では木理が周期的に変化する交錯木理が見られ,樹冠各部に分散して水分を輸送することに貢献しているものと考えられた. ボルネオ島キナバル山の山地林(標高約1600m)において,土壌中栄養塩の異なる2つの森林に生育する優占樹種の木部構造を比較した.堆積岩土壌に生育する樹種は貧栄養の蛇紋岩土壌に生育する樹種に較べて道管内腔の面積割合が高く,材の容積密度の値が広い範囲にわたっていた.原形質分離時の浸透ポテンシャルは蛇紋岩土壌の樹種の方が小さかった.蛇紋岩土壌に生育する樹種では小型でLMAが大きく窒素含量(重量濃度)が小さいという,乾燥条件に適応した葉の性質をもっていた.以上のことから,貧栄養の土壌に生育する樹種は生理的な乾燥にさらされていて,結果として樹高が低く,多様性の小さい森林を形成していると考えられた.
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