Research Abstract |
人間が話し言葉で情報を説明するとき,小さな発話単位により情報を漸次的に伝え,受け手の反応に応じて説明を構成していく.本研究は,このような特徴を持つ説明を動的説明と呼び,計算機による動的説明法に関する技術の高度化を目的とする. 情報説明の従来研究は書き言葉による説明であり,方法も研究により異なり,一般性も明かでない.話し言葉による説明では,交通経路案内を対象にした研究があるが,その技術は交通経路案内の説明に基づくものである.様々な説明対象に対し受け手に応じた説明を可能にするための研究が必要である. 今期は,説明対話の収録・書き起こし,話し言葉による説明の分析,発話生成および説明構成法,受け手と説明との関係,対話参加者の働きなどについて研究を進めた.説明対話の収録・書き起こしについては,PCソフト(エクセル)の使用法について,初心者の質問に応じてエキスパートが説明する対話を39対話収録し書き起こした.分析については,交通経路案内14対話を対象に,対話を局所談話構造に分割し,さらに小さな発話単位に区切り,対話行為を付与した.また,臨床検査データ説明対話3対話を対象に,一発話を構成する局所談話構造を分析した.発話生成に関しては,臨床検査データ説明の発話を対象に,発話を構成する局所談話構造のパターンを求めた.説明構成法に関しては,交通経路案内対話を対象に,基盤化の概念に基づいて局所談話構造を定義し,対話行為が構成する発話パターンの規則を求めた.この規則については,対話行為の認識に有効であることを確かめる実験を行った.受け手と説明方略との関係については,エクセルの説明対話を対象に,質問発話の明確度により行われる部分対話,質問者が使用する用語に応じた説明や発話の違いを分析した.
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