Research Abstract |
本研究は,複数の物体が存在する自然画像において,細かい構造に無関係に大局的な領域を分割・抽出し,分割領域の関係性を理解・認識することにより情景理解を行うモデルとアルゴリズムを開発し,さらにそれを実行する集積システムを開発することを目的とする。最終年度である今年度は主に以下の成果を得た。まず,昨年度開発した,大局的領域分割時に問題となるエッジの欠落を補完する「主観的輪郭」を再現するアナログ型異方性拡散アルゴリズムを詳細に回路化し,回路シミュレーションにより所望の拡散現象を確認した。次に,本研究の最終目標である情景認識集積システムを開発した。すなわち,抵抗ヒューズネットワークによる大局的領域分割とダイナミックリンクマッチングをそれぞれPCにUSB接続したFPGAボード上で実行し,リアルタイムで分割・認識を行うシステムを開発した。さらに特定の分割領域の認識結果を用いて,データベース化しておいた分割領域間の関係性に基づいて各領域を認識した。例えば,顔領域を認識した後,顔の上部に髪があること,顔の下に身体と衣服があることをデータベースの領域間関係性から読み取り,ある人が黒い髪をして白い服を着ていること,さらにある種のペットボトルを持っていることなどを認識することができた。この結果は,本研究で用いた大局的領域分割および認識アルゴリズムが特定の顔や物体特有の特徴を用いておらず,汎用的な認識処理ができることによる。これらを単なるソフトウェアではなく,本研究の特色である集積システムで実行することにより,可搬性のよい小型ノートPCでも,ほぼリアルタイムで実行することができた。
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